◇Novel

□ヒカリ
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オレは、それと同様に淡く光を放つ金糸に手を載せて言う。


「まだ早いぞ。もう少し寝ろ」


オレのその言葉に、キョトンとした顔になるオズ。そしてすぐにふにゃりと笑むと、オレの背に手を回し、ぎゅう。と抱き付いてきた。


「あはは。ギル偉そうだ」


まだ、半分寝ぼけているのかもしれない。見上げてる瞳が揺れているのを感じ、そう思った。と同時にオズはオレの胸にこつんと頭を預け、そして言う。


「ギル。さっきは激しかったけど、凄く気持ちよかったよ?」
「な!?」


思いがけないオズの言葉にみるみる顔が熱くなっていくのを感じる。いきなり何を言ってるんだコイツは!
オズは動揺するオレを見、ホントのコトだよ?と微笑むと、回していた腕に軽く力を込めた。


「・・・まあ、痛い時は結構痛かったけど・・・。でもそれ以上に凄く・・・嬉しかった」
「・・・そうか」


うん。と頷き、微笑するオズ。そして身体を伸ばして自らの意思で口付ける。オレも応えるようにオズの口腔に舌を滑り込ませ、絡ませながら彼の身体をそっと抱き寄せる。


「ん・・・ふっ・・・ぁふ・・・」


ちゅくちゅくと唾液がたてる卑猥な音が響き、互いに互いを貪りあう。オズの甘ったるい喘ぎ声が間近に聞こえ、唾液の滴り落ちる音が耳に届いた。


「・・・はぁ、んっ・・・」


糸を引き合う唇を離すと、オズは崩れるようにオレの腕の中に倒れ、惚けたような表情で荒い呼吸を繰り返した。

その様はとても扇情的で、思わず見とれてしまう。


「・・・ギル」
「なんだ?」


ぎゅう。とオレの袖を掴むオズに返事をし、その先の言葉を促す。オズは上気した顔をそのままに、瞳に何処か寂しげな雰囲気を漂わせながらオレを仰いだ。


「何処にも行くなよ。ギル、一生・・・」


傍に居て。と最後は呟きのようになった言葉。再び俯いてしまったオズの頭にオレは自らの手を乗せ、その金糸を軽く梳いてやる。


「約束する。何処にも行かない」


そう囁き、オズの顎に手を添えて軽く上を向かすと、再び唇にキスを。オズは頬を僅かに朱に染め、大人しくキスを受け止めた。


「・・・誓いのキス?」
「・・・駄目だったか?」
「ううん!全然」


嬉しそうに微笑み、首に抱き付く主人。受け止めた彼の身体はまだ幼く、あんなに頼もしく見えていた10年前とは違っていた。
しかし、ようするにそれは、オズがまったく変わっていないことを示している。

姿も、声も、その体温も。

彼はそのまま、ほてった頬を摺り寄せると、感情のこもった声で呟く。


「ギル、オレ今凄く幸せだよ・・・?」
「・・・ん。オレもだ」


顔を互いに僅かに離す。オズは上目遣いにオレを見、自分はそんな彼と目線を絡ませ微笑む。


「戻って来てくれて、ありがとう。オズ」


その言葉を聞くと、オズは驚いたように目を見開いたが、すぐに今にも泣き出しそうな表情になり、ゆるゆると頷いた。

これからも、二人で穏やかな夜を迎えられるように。

願い、祈り続ける。

オズと約束した『絶対』に誓って。


「オレも・・・」

待っててくれて、ありがとう。ギル。

 
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