◇Novel
□ヒカリ
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―ヒカリ―
窓から差し込む光が眩しくて、目が覚めた。
ゆっくりと身体を起こすと、軽い音をたててベッドが軋む。丁度ベッドの前方に設置されてる窓から外を見ると、まだ夜明けにはなっておらず、その光の根源は満月だった事に気付いた。
鮮やかな乳白色。
無垢なその輝きを見ていると、心の底まで見透かされてるような気分になる。
否、そんな事は無いのだが。
ズッ・・・とシーツが擦れる音がし、オレは其方に目を向ける。
オレのすぐ隣には、小さな寝息をたてて安らかに眠る、愛しい人の姿があった。
柔らかな金糸が、満月に照らされ淡く光を放っている。
そっと、その額を指先で撫でると、オズは一瞬眉を顰めたが、すぐに元の安らかな寝顔に戻る。
ふっと、自然に笑みが零れる。
オレは窓へと手を伸ばし、その窓を少しだけ開く。
開いた隙間から温かくも冷たくも無い風が入り込み、薄手のカーテンは、ふわりと宙を舞う。
静かに眠るオズから目を逸らし、オレは再び爛々と輝く満月を見つめる。
こんなに穏やかな夜を迎えられるなんて、想像もしていなかった。
オズが居なくなった後の夜は、不気味なほど静かで、孤独という恐怖心を煽るものでしか無かった。
いくら洗っても拭いきれない血の臭い。
早く夜が明けるようにとベッドの中で願い続ける日々。
その毎日が、変わった。
オズが戻ってきた。
愛しい人と過ごす夜が、こんなに充実してるとは想いもしなかった。
二人で迎える夜明け。
今でも、そんな奇跡が信じられなくて、もしかしたらこれは夢なのかもしれないと何度も疑った。
でも、彼はこうして隣に居る。
「ん・・・」
もぞ・・・と布団が動く気配がし、隣に目を向けると眠たそうに目を擦りながら、オズが起き上がってきた。
窓から吹き込む風が寒かったのだろうか。オズはとろんとした目をオレに向けた。
「ギル・・・?」
「すまない。起こしたか?」
ううん。と首を横に振るオズ。その動きで、事後に掛けてやったシャツがはだけ、赤い所有印が幾多に覗いた。
オズの肌は月明かりを受け、それ自体が発光しているかのように真っ白だった。