◇Novel
□深く深く
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―深く深く―
「ん!あッ・・・は、ぁ・・・!」
「オズ・・・つらくないか・・・?」
「・・・んっだい、じょうぶ・・・っあ!」
ギシギシと音をたて、軋むベッドの上。そこにオレとギルはいた。
ギルに抱かれるのは、これが初めてじゃない。もう、何回目の情事なのかも分からないけど、ギルはいつも、オレをまるで宝物か何かを扱うように、酷く優しい手付きでオレに触れてくる。
まるで、何かが壊れる事を、恐れるかのように。
「っんぁ!・・・ん、く・・・!ひぁ・・・っ」
動かす衝撃で、思わず上がった声を聞き、ギルは「オズ・・・」と啄ばむように甘くキスする。繋がっている事を確かめるように。何度も。何度も。
ギルは、オレから唇を開かないかぎり、絶対に深く口付ける事は無い。それぐらいは積極的になればいいのに・・・と思いながら、オレは薄く口を開き、舌先を、今も触れるようにキスをするギルの唇に、軽くなぞるようにあてる。そこでやっとギルは応えるように舌先を絡め取り、呼吸さえも奪うような深い口付けを施してくれる。
「ふ・・・んくっ・・・ん、ふぅっ!・・・」
くちゅん・・・と水音が、瞼を閉じたオレの耳に聞こえてくる。
ギルとこうして互いの体温を感じてる時間は・・・
正直言って・・・ツライ。
ギルのことは、大好き。従者としても、恋人としても。堪らなく、好き。
でも、知ってしまったから。
初めて繋がったあの夜に。
きっと、幸せになれると思った。一つになることに、喜びを感じていた。
でも、実際に繋がり合って、分かってしまった。
人間は、一つになんてなれないことを。
どんなに熱に溺れても。互いを近くに感じても。
一つになんて、絶対なれない。
何故なら、オレ達は"二人"の人間だから。
ようやくお互いに、激しく貪りあっていた唇を離す。銀色のソレが、糸を引いて鈍く光った。
ハッと息を荒げ、絡め合う視線。
熱のこもった目。
トクン。と心臓が跳ねた。
「・・・オズ、すまない・・・」
「?・・・ッ!」
何が?と朦朧とする頭で問い掛けようとした言葉は、身体に走った激痛によって悲鳴に変わる。
・・・何を叫んだのかは、自分でも聞き取れなかったけれど。
「ッい・・・んぁッ・・・!」
ギルのモノが身体のナカに、更に深く深く、突き刺さる。痛い。痛いよ。ギル。
でもこの痛みにも、もう慣れた。
「ッあ、ん!・・・ひぅ・・・ふっああッ!」
さっきよりも、激しく腰を打ち付けるギルに、翻弄されるかのように喘ぎ声を上げてしまう。でも、快楽に溺れるなんて事は無い。
このまま、互いに体温でグチャグチャに溶けて、混ざり合って一つになりたいと、何度願ったんだろう。
そんな願い、永遠に叶うことは無いんだと。分かっているのに。とっくに、受け入れているのに。
でも
「・・・ギル」
どうせ、叶わない。どうせ、いつか終わりが来るのだったら。
「もっと、愛してよ」
今、この瞬間だけでも。
おまえの愛が欲しい。
ギル。