◇Novel
□仮初めの愛
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だが、それは愛しているから。と言うわけでもなく、鴉は彼から愛のある情事を受けたことは無かった。ヴィンセントにとって、鴉は暇な時に遊んで、飽きたら捨てる玩具と同じなのだ。
涙のせいで、滲む鴉の視界には、無表情で自分の身体を弄るヴィンセントの姿が映る。
彼は、自分を壊して何がしたいのだろう。
「・・・っぐ・・・」
やがて、ヴィンセントは小さく唸り、鴉のナカで達した。熱いモノが注ぎ込まれ、鴉は嬌声を上げると何度目かの絶頂を迎える。
ヴィンセントは満足そうに深い嘲笑を浮かべると、手の中に吐き出された鴉の白濁色の液を、丁寧に舐め取った。
虚ろな瞳で、その様を眺める鴉。その彼の脳裏に、再びあの感情が蘇る。
おまえは、いったい
「・・・何を、したいんだ・・・?」
思わず、口に出してしまった言葉。瞬時にはっとなった鴉が、目の前の彼を見てみると、ヴィンセントは軽く目を見開き、そして。
「さあね」
口の端を上げて、意地悪そうにクスリと笑むと、鴉へと口付ける。無理矢理にこじ開けられた口腔に舌を突っ込み、更に口付けを深いものへと変えていくヴィンセントのその行為を、なすすべもなく受け入れる鴉。そして、舌同士を絡められる最中に、何かをパサリ・・・と瞼にかけられる。
・・・目隠しか・・・。
キスを解いた後も、暗闇となった視界にそう確信した鴉は、諦めたように大きく息を吐く。
そして、ヴィンセントにそのまま身を任せた。
早く、この悪夢が終ることを信じて。