◇Novel

□コトバ
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「!あ・・・す、すみません!」


ハッとしたように、慌てて手を伸ばすギルバートを見て、オズは不満げに目を細める。そして、その手を掴まずに立ち上がると、彼の前に立つ。ギルバートはビクビクしながら「そ、その・・・」と怯える様に口を開いた瞬間。


「お兄ちゃん」


扉の方から、無邪気そうな幼い声が聞こえた。ドキッとして慌てて扉の方を振り向くと、そこには一冊の絵本を両手で抱えたエイダの姿があった。
オズはほっとしたように息を吐くと、ニコニコと笑いながら、駆け寄ってくるエイダへと話しかける。


「どうしたの?エイダ」
「あのね。これ読んでほし・・・あ!」


読んで欲しいと言いかけたエイダは、机の上の紅茶を見、そして嬉しそうにギルバートへと話しかける。


「ねぇギル。これ、飲んでもいい?」
「え?あ、はい。ボクの分なら、飲んでも構いませんよ?」


先ほどの事で、ぎこちなく答えるギルバート。幼いエイダは無邪気な笑顔を満面にたたえ「ありがとう!」とお礼を言うと紅茶を手に取り、


「ギルって、紅茶淹れるの上手だし、優しいから大好き!」


と笑った。釣られたギルバートも笑顔になり、


「はい。ボクも、エイダお嬢様の事、大好きですよ」


と言い、そして瞬時にはっとなる。
慌てて後ろを向くと、オズは変わらない笑顔だったが、その目は全く笑っておらず「エイダには大好きって言うくせに、オレには何も言ってくれないんだね〜」と無言で訴えてくるのがよく分かった。

そして、椅子に座っていたオズは、ガタン!と音を立てながら立ち上がり


「エイダ。ちょっとギル借りてくね。すぐ戻ってくるから」


そうエイダに話し、ギルバートの腕を掴むと、きょとんとしている彼女を残し、オズは早足で部屋を出て行った。
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