◇Novel

□痛みより甘く
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抵抗なのか、反動なのかは分からないが、揺れた足の刺激で、再び足首には、疼くような痛みが走り、鴉は更に大きく身体を震わす。


「・・・ッ!」
「ああ、ギル。ダメだよ?足動かしちゃ。まだ手当て終って無いんだから」


ニコニコと言うオズに、鴉は軽く一睨みする。オズがこういう笑い方をする時は、何かを企んでる事を知っているのだ。
案の定、オズはベットへひょいと飛び乗り、布団を軽く叩く。


「ギル。辛いと思うけど、オレに背を向けて座ってくれない?」


ダメ?と小さな子供のように上目遣いに尋ねるオズに、鴉は当然断れるわけもなく、浅く頷くと、ゆっくりと身体を移動させてオズに背を向けた。


「オズ。これでどうやっ・・・!?」


尋ねた瞬間、温かいものが鴉の身体に抱き付く。慌てて振り向くと、そこには静かに笑むオズの姿があった。そして。


「ちょっオズ何を・・・っ」


左手で鴉の腰から太股にかけてのラインを撫でる。服の上を滑り、ソコに触れるか触れないかの感触に、身体を捻る鴉。


「う、ぁっ・・・オズやめっ・・・」
「はい!終わり」
「・・・え?」


いきなり言われ、右足を見てみるといつの間にかシップを貼られていた。身体を弄っていた左手の方に気を取られて気付かなかったらしい。


「念のため、包帯も巻いといたほうが良いかもな・・・」


楽しそうに呟くオズを見て、鴉はその手から包帯を奪い取る。


「もう自分でやるから!離れろ。オズ」


いまだに背中に張り付いてるオズに、鴉はまた何かされるかもしれないという思いにビクつきながら訴えた。オズは顔を上げて、黒髪の従者を見、そしてニッコリとこれ以上無いくらいの笑顔を見せた。不自然なその笑みに鴉の身体がギクリと固まる。


「大丈夫だよ!ちゃんと真面目にやるからさ」
「・・・本当か?」
「うん!」


笑顔で言い切ったオズに、安心したような笑みを見せ、包帯を返す鴉。彼は包帯を受け取り、そして。


「さっきは中途半端にヤッてごめんね。ちゃんと最初からヤろ?」
「え!?」




「なあ、オズ」
「ん?なあにアリス」


次の日。アリスはリビングにいるオズへと訝しげに問い掛けた。


「あのワカメはまだ起きてこないのか?もう昼近くだぞ」


オズは、自分で入れた紅茶を傾けながらその問いに答える。


「ギルは、右足首捻挫と、腰を痛めてて起きれないんだってさ」


はぁ!?とアリスの呆れたような声が聞こえ、オズは笑みながらカップをソーサーに戻す。


「だから、今日は昨日の残りものを食べるしかないね」
「ふん!まったく軟弱な奴だな!まあ、昨日はピエロから食べ物をたくさん奪って来たから別にいいけどな」
「も〜。ダメだよ。そんな事しちゃ」


オズとアリスがそんな平和な会話をしている中、隣の部屋で痛みに呻いている鴉が居たことは言うまでも無いのであった。
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