◇Novel

□痛みより甘く
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    ―痛みより甘く―












「これぐらい、平気だっ・・・ッ!」
「も〜立っちゃダメだって!ほら、座って」


慌てて立ち去ろうとする鴉を、オズは宥め、目の前のベットへと座らせた。
そしてオズも彼の目の前に座り、その鴉の靴と靴下を脱がすと、その足首をそっと撫でる。
鴉の体が震える。


「あ〜あ、こんなに腫れちゃって」


オズはそう言い、床に置いた救急箱からシップを取り出す。


「・・・オズ、別に自分で・・・!」


恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて、鴉はオズの手からシップを取り上げようとするが、オズは「ダーメ!」と言い、そのシップをサッと避ける。


「オレがやりたくてやってるんだからいいの。それに、これはオレの責任でもあるしね」
「そんな・・・オズは別に悪くない。悪いのはあのバカウサギで・・・」
「でも、元の原因はオレだから・・・。いいの。気にしないで」


そう言ってオズは鴉を見上げて微笑んだ。

なぜ、今鴉はこんな状況になってるのか。

それは、オズのせいで鴉は右足首を捻り、まともに歩けなくなったからだ。
いや、実際の原因はオズと言うよりも、アリスと言ったほうが正しいかもしれない。

数十分前、アリスは非常にご立腹だった。
原因は、ただオズとのトランプ勝負に負けたという他愛も無いものだったが、それでも元々負けず嫌いのアリスは逆切れして憤り、トランプを床に叩きつけて暴れ、仕舞いにはオズの背中を思いっきり蹴飛ばすということまでやってみせた。
不意をつかれたオズはそのまま倒れそうになり、丁度一部始終を見ていた鴉が、このままじゃ頭をぶつける。とでも思ったのだろう。慌ててオズを抱き止め、そこまでは良かったものの、その際不安定だった右足首を内側に捻り、鈍い音を立てた。何とか背中から落下するようにして受身を取ったものの、鴉は相当強く足を挫いたようで、そこは痛々しく腫れ上がっていて。
見かねたオズが、この部屋まで運んで行ったのだった。


「それにしても・・・」


鴉は、オズから目を逸らして悪態を吐いた。


「あのバカウサギはどうしたんだ!?アイツのせいでこうなっているのに!」
「アリスならさっき家を出て行ったよ?シャロンちゃんの屋敷にでも行ったんじゃない?」


笑いながら答えるオズに対し、鴉はふるふると震えながら。


「あのやろう・・・」


怒りで打ち震える鴉を見て、オズはまぁまぁ。と楽しそうに彼を宥め、そして。


「いいじゃん。別に。そのおかげでこういう事出来るんだから」
「はあ?何を・・・!」


鴉が訝しげに言い、そして身体をビクリと震わす。オズの手が、鴉の内股をそっと撫でた。
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