◇Novel

□闇よりも暗く
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そして情け容赦無く、更に言葉を吐いていく。


「そうで無くても、アヴィスは時の狂った空間。もしかしたら、向こうでは100年経ってるかもしれないんだよ?」
「・・・っそれでも・・・」


希望に縋り付こうとするギルバートを見て、ヴィンセントは目を細めて淡々と言い切る。


「もう、死んじゃってるよ。助けに行ってもムダ」
「ヴィンス!いい加減にしないと・・・!」


怒りに駆られたギルバートは、ヴィンセントの胸倉を掴む。
だが、それ以上、殴る事も蹴る事も出来なかった。
原因は心の底では、ヴィンセントの言うとおり、オズはもう死んでしまってるかもしれない。と言う、絶望が巣喰っているせいだろう。

グラリと頭痛がし、ギルバートは壁に凭れ掛かった。
緩くなった指を、胸元から簡単に外し、ヴンセントはギルバートの顎に指を添えて、くいっと上を向かせる。

ギルバートの瞳には、僅かな月光によって光る、涙の雫があった。

それを確認すると、ギルバートの涙を見れた事が嬉しいようにヴィンセントはクスクス笑った。


「死んでたら悲しいよね。ギルのたった一人の主人」


ギルバートはその瞳から目を逸らそうとする。が、出来なかった。ヴィンセントのオッドアイは何か闇よりも深いモノを秘めているように見え、視線を逸らす事さえも恐ろしかった。

恐怖でカタカタ震えだすギルバートを見て、ヴィンセントは口元だけで微笑する。そして、耳元で囁く。


「そもそも、オズ君がアヴィスに堕ちたのは、ギルが主人を護れなかったから」
「!!」


その言葉がとどめだったかのように、ギルバートは一筋の涙を流す。ヴィンセントは耳元から顔を離し。


「そうでしょう?」


否定する事が出来ない言葉に、ギルバートはヴィンセントの瞳を見ながらただ、涙を流し続ける。
冷笑するヴィンセント。


「兄さん、可哀想。誰に泣かされたの?」


魔法にも掛かったかのように彼を見つめるギルバートの目には、薄く笑うヴィンセントの姿が映る。

ヴィンセントは、自分の思いどうりになるギルバートに、愉悦感と、快感を同時に得ていた。
そして、いまだに涙を流すギルバートへと口付ける。


「んっ・・・ぅくっ・・・ふ、ぅ・・・んう!」


くちゅり。と水音が響き、激しく犯される口腔。舌を絡め、時に強く吸い上げられ、ギルバートの口からは二人の混ざりあった唾液が流れ落ちる。

いったい、どれ位貪っていたのか。ヴィンセントはようやく、絡めていた舌を解き、ギルバートの口を開放した。激しく貪ったことが分かるように、互いの口から銀の糸が延びる。


「はぁ・・・」


濃厚な口付けに耐えられなかったと見れて、ギルバートは床へと崩れ落ちる。最後の涙が頬を伝い、顎の縁から零れ落ちた。
ヴィンセントは薄く笑い、自らも屈みこんでギルバートの口から流れた唾液を舐め取ると、床に落ちていた・・・ ギルバートが先ほど落とした黒い羽を手にし、ギルバートの前に突き出した。
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