◇Novel
□ココロの中で
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鴉は、オズとの情事を拒んでいた。
本当は、オズが望むなら、この身体を捧げたい。奪ってもらいたい。
汚れた身体をシャワーで流しながらそう鴉は思う。
でも、駄目だ。
この身体はもう、どう洗っても洗っても穢れたまま。
そんな身体をオズに見せるわけにはいかない。
着替えた鴉は浴室から出ると、リビングへと呼びかける。
「オズ!出たぞ。入れ」
しかし、リビングはシーンとしていてまるで反応が無い。
「オズ?」
不安になり、リビングへ向うとオズはソファーで丸くなって寝息を立てていた。
待っている間に眠くなってしまったらしい。
静かな寝息を立てているオズを見ていると愛おしさが込み上げてきて、その場に座ると、鴉はその額をそっと撫でてみる。
その途端、オズが動き、起こしてしまったのかと慌てて手を除ける。
オズは起きてはいなかった。ただ、鴉の方へと寝返っただけだった。と、その顔が微笑む。なんの夢を見てるんだろうと鴉が思うと同時に
「ギル・・・」
オズは優しい声で呟き、再び深い眠りに落ちていった。
その途端、鴉の心の中に湧き上がる、数多の、すまない。と想う気持ち。
オズがこんなにもオレを愛してくれるのに、自分は何一つ、答える事が出来ない。
すまない・・・すまないオズ。
でも、駄目だ・・・駄目なんだ・・・。
心が張り裂けそうになった鴉は、その手で顔を覆った。
顎の縁から零れ落ちるのは、涙の雫。
すまない・・・すまない・・・
心の中でひたすら謝りながら、鴉はただ、静かに涙を流し続けた。