◇Novel
□その月の下で
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その体勢のまま、どれくらい時間が過ぎたのか分からないが、やがてギルバートは「でも・・・!」と口を開いた。
「すごく・・・嬉しかったです。その・・・坊ちゃんがボクのことを心配してくれて・・・」
「・・・ギル。そういうことは、時間と場所を考えて言ってくれない?せっかく抑えてるのに・・・」
「え?何を・・・ふぁ!?」
裏返った声を出したのは、オズがいきなりギルバートを押し倒したからだ。
そしてそのまま、驚いているギルバートに口付け、その舌を強く絡ませる。アルコールの摂取で、敏感になっているギルバートの身体は、少し刺激を与えるだけで、面白いように反応し、甘い声が絶えず漏れる。
「んっ・・・ふ・・・ぁっ!・・・はぁ・・・」
くちゃっと水音のようなものがし、絡めた舌を解かれると、ギルバートは、元から赤かった顔を更に紅潮させて、荒い呼吸をくり返した。
オズはギルバートの上から退くと、口元を拭いながら
「キスだけで済んで、有り難いと思ってよ?」
と笑いながら言った。ギルバートは俯きながら「も、もう・・・坊ちゃんたら・・・」と恥ずかしそうに呟いた。
オズはそんなギルバートを抱き寄せ、そっと額にキスをした。
愛しい。ギルが堪らなく愛おしい。
最初は、相手は従者なのに・・・と躊躇っていたこの気持ち。
でも、引かれる想いは止められず、ある時ふと口から漏れていたあの言葉。
・・・ギルが好きだ。
すると、ギルは引いたり、笑ったりもせず、たた、ボクもです・・・。と少し恥ずかしそうに足元を見ながら呟いた。
ああ、あの頃から、この想いは少しも変わらず、今もこの心の中で生き続けている。
オズは、ギルバートを包み込むように抱きしめた。ギルバートが腕の中でビクリと震えたのが分かった。
「・・・坊ちゃん?」
「・・・少し、このままでいさせて?」
するとギルバートは驚いた顔をしたが、すぐに柔らかい笑顔になり、「はい・・・」と言って、ギルバートの方からも、オズを抱きしめ返した。
頃は深夜。外の唯一の光源・・・満月が、ベザリウス家の屋敷を優しく映しだしていた。
その満月が照らす、たくさんある部屋の一室・・・オズの寝室で二人が抱き合うのを、
月だけが、ただ静かに、眺めていた。