◇Novel
□その月の下で
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―その月の下で―
頃は深夜。外の唯一の光源・・・満月は、ベザリウス家の屋敷を、優しく映しだしていた。
その満月が照らす、たくさんある部屋の一室・・・オズの寝室にギルバートはいた。
ベットの上で、ぺたん。と座りこんだギルバートは、そのとろけてしまいそうな虚ろな瞳に、うっすらと涙を浮かべながら
「坊ちゃん・・・」
と、これもまた、とろけてしまいそうな甘い声で、目の前の人物・・・オズに呼びかけた。赤く染まった頬が、何とも可愛らしい。
「ギル・・・」
オズは振り向き、ベットの上のギルバートの姿を見ると、ふっと笑みを零した。
ギルは再び、「坊ちゃん・・・」と呼ぶと、オズの服の端をきゅっと掴んだ。その際に、緩めていたシャツがはだけ、鎖骨が覗いた。
「まったく、ギルったら・・・」
こんなになっちゃって・・・。とオズは呟きながら、ギルバートの隣に腰を下ろす。ベットの軋む音が響き、ギルバートは「そんな事言われても・・・」と、赤い顔を更に紅潮させて、消えるような声で呟いた。
オズはそんなギルバートを見て、もぉ・・・と笑うと
「まさかあれぐらいのお酒で、こんなになっちゃうとは思わなかったよ」
と水を差し出しながら言った。
ギルバートは、そんな・・・と言い、不可抗力です・・・と後から付け足した。
先ほどまで、オズとギルバートは大広間で開かれていたパーティに出席していた。二人ともそれなりに楽しんでいたのだが、ギルバートがジュースと間違えて、酒を飲んでしまい、気が付いたオズが慌てて取り上げたものの、すでに遅く、だんだん酒が回りだしたギルバートを、オズはパーティを途中欠席してまで自分の部屋まで運んだのだった。
ギルバートはそれにしても・・・と呟き
「パーティ・・・欠席してきていいんですか?ボクならもう大丈夫ですから・・・どうぞ戻って・・・」
といい、オズはダーメ!とその言葉を塞いだ。
「オレはギルのいないパーティなんてどうでもいいの。それに、全然大丈夫じゃないだろ。立てなくなるまで飲んで気が付かなかったの?」
「はい・・・。周りにお子様もたくさんいましたし、まさかそんなところにお酒を置いてあるとは思ってなくて・・・」
まあ、たったカクテル一杯だけだけどね。とオズは言い、ギルバートはそんなオズを見て、少し笑った。
嬉しかったのだ。
オズが、何よりも自分の事を心配してくれて。
「・・・ありがとうございます。坊ちゃん」
水を受け取りながらギルバートが言うと、オズは笑いながら
「いいんだって。オレが望んでやってるんだし」
と言って、ギルバートをそっと抱き寄せた。彼は一瞬ビクッと震えたが、やがてオズの体温を感じて安心したのか、そのまま寄りかかる格好になった。