◇Novel

□校門で待ってて
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「オズ!」
「?ギルバート先生?どうしたの?」


校舎を出たところで、聞きなれた声に名前を呼ばれ、オズは不思議そうに声の主を見上げた。


「ほら、この前提出したレポート。採点したから持ってきたんだ。さっき渡し損ねたからな」


そういって鞄の中をごそごそと漁り、だが。


「・・・おかしいな・・・。すまないオズ。職員室に忘れてきてしまったみたいだ」


落胆したように言うギルバートに、オズは笑う。


「大丈夫ですってー。ギルバート先生。明日にでも渡してくれれば」


明日も明後日もあるのだから、別に急がなくてもいいだろう、と。そう言うと彼は渋面を作った。


「いや、今から取ってくる。オズは校門で待っててくれ」


唯でさえヘタレだのワカメだのとからかわれることの多い彼だ。失敗したところを生徒に見せたくないのだろうが、それが余計に子供っぽいんだよなぁ、とオズは心中そっと呟いたが顔には出さず、代わりに笑顔を作ってこう言った。


「うん。待ってる」





ギルバートは慌てていた。職員室に戻って、レポートを取ってくるまでは何事も無かった。だが、今日の夕方4時から、緊急の職員会議があることを告げられたのだ。慌てて支度をしたが、会議と言ってもせいぜい30分以内に終わるだろうと思って、オズに伝えなかった自分の判断が甘かったとしか言いようが無い。その日の会議は延長に延長を重ね、終了したのはなんと夕方6時ちょっと過ぎだった。

これではいくらなんでも、オズも帰ってしまっているだろう。レポートを握り締め校門に走ったが、案の定日の光も落ちて暗くなった校門前には、誰の姿も無かった。まあ、当然と言えば当然の事なのだが。

諦めて、戻ろうとしたその時。


「ギルバート先生?」


校舎の陰から、見慣れた金髪が覗いた。驚いて目を丸くする二人。オズはへにゃ、と安心したかのように微笑んだ。


「よかった〜。何かあったんじゃないかと心配したよ」


なんで、と問うと、オズはきょとんとしたように何度か瞬き、そして笑った。



「だって先生言ったじゃん!『校門で待ってて』って」




                 ―校門で待ってて―
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