◇Novel
□甘いモノ
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―甘いモノ―
「ねえねえギル!」
厨房で朝食を作っている鴉の背中に、オズは勢いよく飛びついた。
「なんだ?オズ」
朝食を作る手を止めて鴉が振り向くと、オズは一枚の広告を差し出した。そこに書かれているのは簡単な地図で、その中心には家マークのようなものが記されていた。
「コレがどうかしたのか?」
と鴉が広告を見て尋ねると、オズは鈍いな〜〜とぶーぶー言い、そしてこう言った。
「今日の朝食、ココで食べない?」
それは最近評判のレストランの広告だった。オズは笑顔だが、鴉は苦い顔を隠せない。
「朝食って・・・無理だろ。もう作っとまったぞ?」
鴉の作った朝食はすでに殆ど完成している状態だった。捨ててしまうのは勿体無いし・・・。
オズはそれを聞くと、大丈夫だよ〜と笑いながらこう言った。
「アリスがそのうち起きてきて全
部食べてくれるよ!」
そのアリスは現在別の部屋で爆睡しているが、近々起きてくるだろうし、起きてくればあの性格ならば何も書置きをしなくても、そんな物お構いなしに全て平らげる事だろう。そのせいで以前、鴉がオズの為にと作った菓子を、アリスが勝手に食べてしまったという事件もあった。まあ、この時怒りが爆発したのはオズよりも寧ろ鴉の方で、オズは宥め役に回ったのだが。
鴉もそれを思い出し、まあ、そうだなとひとまず納得し、今度は
「で、なんでいきなり行きたいな
んて言い出したんだ?」
と疑問をぶつけた。オズは相変わらず笑いながら
「いきなりじゃないよ!前から行きたいと思ってたもん」
と言った。何かを企んでそうだな・・・と鴉はそう思ったが、
「ほら、早く行こうよ!」
と手を引っ張られると、まあいいかという気分にもなる。
何故なら、アリスも一緒に行けるのに・・・。ようするに二人になりたいということで。
鴉はオズと歩きながらそう幸福を感じていた。