和泉家の事情

□遊んであげよう
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翌日、朝一で敬汰がウチに来た。
「おはよ!」
「敬汰‥お前、今何時だと思ってんだ」
「6時!」
「嬉しそうに答えてんじゃねぇ」
軽くスネを蹴りつける。
「ってぇ!相変わらず乱暴者だな」
「お前に常識が無いからだろう?
朝っぱらからインターホンをガンガン鳴らしやがって!
近所迷惑を考えろ」
「しょうがねぇじゃん。
携帯鳴らしても起きて来ねぇんだからさぁ。」
敬汰は言いながらドカドカと上がり込む。
「勇哉!朝だぞ!」
「こらっ!起こすな」
揺すり起こそうとする敬汰の耳を引っ張り勇哉から遠ざける。
「相変わらず過保護」
「うるさい。大体何なんだその荷物は。
お前が来るのは明後日だったろ?」
「良いじゃん。細かいこと言うなよ。
兄弟水入らずで長く過ごしたいじゃん」
敬汰はそう言って笑った。
「まったくお前は‥」
こんな顔をされると帰れとは言えなくなる。
「朝メシ食べてないんだろ?
パンで良いか?」
尋ねておきながら返事を待たずトースターにパンを投げ入れる。
敬汰はそれを嬉しそうに眺めた。
「なんだよ?」
「サンキュ。兄貴って優しいよな」
「ばぁか」
笑う俺を敬汰はほんの少し目を細めて見た。
「早くに起こしてごめん。
兄貴がバイトに行く前に来たかったからさ。
バイトって何時から?」
「‥‥休み」
「休み?なんで?
夏休み中は稼ぎまくるって言ってなかった?」
痛いとこをいきなりついてくる。
勇哉が熱を出したなんて言ったら煩く質問攻めしてくるに違いない。
「シフトの関係でそうなったんだからしょうがないだろ!」
「なんで怒るんだよ」
「怒ってねぇ。
お前こそ部活は?」
「中休み。お盆が来るし。
あ、俺ココアにして」
甘えるように敬汰が後ろから腰に手を回して抱きついてきた。
肩越しに俺の手元を覗き込み微笑む。
「スープ旨そう」
「ココアと合わないぞ?」
「気にしないし」
「お前らしいよ。
昨日の残りで良いなら飲むか?」
「うん」
敬汰の手がゆっくりと腹を撫でる。
「やめろバカ。暑苦しい」
肘で敬汰を押しどけるが更にキツく抱き締めてくる。
「本気で怒る前にやめろよ?」
軽く睨むと、ケチ‥とブツブツ言いながらも手を離した。

先が思いやられる。
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