和泉家の事情

□愛しくて
2ページ/14ページ

アイスの先端を軽く舐める。
何度か舐めていると溶け出して、ツーッと滴が筋を引く。
ソレを舌で追いかけると再び先端まで戻っていく。
アイスの冷たさで真っ赤になった舌先。
細くなったアイスを口に含んでゆっくりと上下させる勇哉。

目を奪われた。
誘われている気になる。
敬汰の言った事が分かる気がした。

勇哉は最後の一欠片を口に入れた時、俺の視線に気付いた。

「爽兄も食べたくなった?」

もう食べちゃった‥、と困り顔。

俺は静かに勇哉の隣に座った。

「爽兄‥?」
怪訝そうに見上げてくる。

俺は勇哉の頭を引き寄せ、唇を一舐め。
「甘い」
感想を言うと、勇哉は持っていたアイスの棒を落とした。

「え?何‥? なんで‥
爽兄? え?」

混乱している勇哉に構わず今度は少しだけ深いキスをする。
僅かに震える勇哉。

勇哉の口内はバニラの味がした。それを味わうように口内を犯す。

「んッ‥」
キュッと腕を掴まれゆっくり唇を離すと、勇哉もゆっくり目を開けた。

潤んだ瞳が俺を見つめる。
もっと‥。と言われているような錯覚。

もう一度、静かに口付けた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ