和泉家の事情

□キスの意味
2ページ/8ページ

俺は勇哉が起きる前にそれを処理して、朝食の準備をする。
って言っても卵とベーコンを焼き、レタスを千切っただけ。
パンをトースターに入れ、コーヒー用の湯を沸かしていると勇哉がボサボサの頭で起き出してきた。

「おはよぉ。爽兄、後は僕がする」
眠そうな目を瞬かせながらカップに手をのばした。
‘大人になって欲しい’
俺にそう言われて、朝一人で起きられなかった勇哉が自ら起きるようになった。俺の求める‘大人’とは違っているが努力は認めよう。
「おはよう。もう出来上がるから良いよ。それより顔洗ってこい」
言いながらさりげなくボディタッチ。俺って変態オヤジみたいだな。
勇哉はくすぐったそうにしながら風呂場に入っていった。
そこでフと伝え忘れていた事を思い出し風呂場に向かって声をかける。
「今日は俺遅くなるから学校が終わったら実家に行けよ?」
3秒後、勇哉は顔を濡らしたまま出てきた。
「最近、金曜日はいつもだね」
頬を伝った水滴が顎からポタポタ落ちるのも気にせず俺を見上げる。
捨てられた子犬みたいだ。
「ちゃんと洗ったのか〜?」
苦笑しながらタオルを渡す。
勇哉は未だに父が苦手だ。最近週末の度に帰らなければならない事が不満なんだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ