和泉家の事情

□何これ?
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爽兄を見てるとキュウッて胸が苦しくなる。

心臓がドキドキして息が出来なくなる。

「どうした?」
って優しく頭を撫でられると、気持ち良いけど恥ずかしくなる。

僕‥おかしくなっちゃったのかな。


+ + + + + + + + +

夏休み中とは思えないくらい学校は生徒て溢れている。
生徒の9割が部活に所属していて、そのうちの7割が運動系だから校庭も体育館も武道館も人がいっぱいだった。
三年生は受験の為、夏休みを最後に引退する。
そのせいか、どの部もいつも以上に活気があって賑やかに感じる。
音楽室からはトランペットやフルートなんかの音がかすかに聞こえてるから文系の部活も行われてるみたいだ。


「はい、終了!午後は体育館でフォーメーションの練習。1時半開始。解散!」
「「ありがとうございましたぁ!」」
中庭での基礎練は体力の無い僕にはかなり堪える。
クタクタになりながら顧問の先生に頭を下げると足元にパタパタと汗が落ちた。
それは周りも同じみたいで、チームカラーの水色のTシャツは皆、濃い青に変わっていた。
「アヂィ〜!勇(ユウ)、見て見て!」
クラスメイトでもある智也(トモヤ)君がTシャツを脱ぎ、絞って見せた。
「わっ!すごい汗」
ジュッと絞り出された汗が滝を作る。
「勇もやってみ?」
智也君はそう言うと僕のTシャツに手をかけた。
「え!?いい!いい、僕はやんない」
慌てて智也君の手を押さえた。
「えぇ?どれ位出るか見たい」
それでも智也君はTシャツの裾を捲り上げようとする。
僕よりも10cm以上背が高い智也君は力も強くてあっさり脱がされてしまった。
「取った!」
嬉しそうに僕のTシャツを絞り始める。
「あんまり出ないじゃん。俺の勝ちだな」
そう言って笑う智也君が可笑しくて僕もつられて笑った。
「あれ?‥‥ソレって」
智也君が急に不思議そうに僕を見つめた。
「なぁに?」
智也君の視線を追って自分のお腹を見ると薄く痣が出来ていた。
それも1つじゃなくて幾つも。
「何これ、虫かなぁ?」
刺された覚えも痒みも無いけどそれしか思い浮かばない。
智也君に答えを求めようと見上げると何故か赤い顔をしていた。
「え?どうしたの!?」
日射病?熱射病?
急に真っ赤な顔して手で口元を押さえた智也君に僕は慌てて手を差し伸べた。
「大丈夫?気分悪い?」
他の皆はいつの間にか居なくなっていた。
お昼ご飯を食べに教室に入ったのだろう。
どうすれば良いのか分からなくて僕は智也君の腕にしがみついた。
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