和泉家の事情

□大人の定義
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「なんだか寂しくなったね」

夕食後、デザートのヨーグルトを食べながら勇哉が呟いた。
理由は聞かなくても分かる。
夕方、一週間近く居座っていた敬汰が帰っていったからだろう。
俺としては静かになって清々したのだが、お子様な勇哉は遊び相手がいなくなり寂しいのだろう。

「俺だけじゃ不満?」
読んでいた本を置いて勇哉を後ろから抱きしめた。
僅かに身動ぐ勇哉。

「そんな事ないよ!でも‥敬兄もいたら、もっと‥楽しいのに、なって思っ‥て」
徐々に声が小さくなる。
「爽、兄‥?」
見上げくる瞳が戸惑ったように揺れた。

それもその筈、俺が勇哉のウエスト部分をゆっくり撫でているからだ。

「な、に?」
後ろにいる俺を見上げる勇哉の瞳には明らかに困惑の色が混じっている。

数度の経験により、何をしようとしているのか感じ取ったのだろう。
不安そうな表情を見せるが、今の俺にブレーキとしての効果は無い。
一週間もSEXどころか、キスさえ殆んどしていない。
そんな俺の理性は勇哉と二人きりになった瞬間につき崩れた。
辛うじて夕食は済ませたもののそれだって無理やり時間を早めた
今はまだ7時前だ。
普段なら食事を準備している時間。
少しでも早く勇哉に触れたくて、良くないと思いつつもバイト先のコンビニから弁当を買って帰ってきた。
一緒にそれを食べ、勇哉がデザートを食べ終えるのを待っていた。


「す‥る、の?」
やっと聞こえる程の声で勇哉が尋ねてくる。
これから何をするか勇哉が解っている、と思っただけで下半身がズクリと痛んだ。

「する」
嫌か?と聞いたら嫌だと言いそうだったから、断定して答えると勇哉は俯いた。

「やだっ‥て言ったら?」

やっぱり拒否するつもりだったな。
もちろん俺は止めるつもりは無い。

「俺は勇哉が好きだから触りたくなる。当たり前の事だろ?
勇哉は俺に触られたくないくらい嫌いか?」

嫌いか?と聞かれて嫌いと答えるはず無い事は承知の上。

「好き」
ふるふると頭を振る。

「じゃあ良いだろ?」
「えっ‥でも」
未だに戸惑ったままの勇哉のTシャツの中に右手を滑り込ませた。
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