和泉家の事情
□chance
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「爽兄。もっと早く歩いてよぉ!電車来ちゃうよ!」
俺の20m位前に居た勇哉が走って戻ってきてハシャイだ声を出す。
「遊園地は無くなんないぞ」
あまりにも嬉しそうな勇哉を見ていると、こっちが嬉しくなる。
三日前、俺はムリヤリ勇哉を抱いた。
その結果、勇哉は体調を崩し二日間寝込んだ。
俺はバイトを休んで付き添っていた。
その際、友人の渡瀬に『暫く休む』とメールを打った。
渡瀬は‘暫く’を一週間と判断したらしい。
今朝、体調の戻った勇哉の了解を得てバイトに行こうと渡瀬に連絡をすると
『えぇ!?もうサオリに一週間入れって頼んだよ。お前は来るな』
拒否されたのだった。
それを勇哉に言うとパッと笑顔になった。
遊びに行きたいって顔に書いてある。
「勇哉がキツくなければ何処か行くか?」
「プール!」
尋ねた俺に勇哉は即答した。
遊びに連れて行くのは良い。
だが、プールは‥。
「遊園地にしよう」
ニッコリ笑って言ってみる。
「なんで?プール嫌い?」
残念そうな顔の勇哉。
俺は勇哉のこの顔に弱い。
「いや、嫌いっていうか‥」
勇哉の体には俺が付けたキスマークがある。
気付いていない勇哉に言えずにいた。