ショート
□秘密の飲み物
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「お兄ちゃ〜ん!あ〜そ〜ぼ!」
今日も元気一杯窓の外から叫んでくるのは隣の家に住む幼稚園児。
窓から顔を出すと、寒さのせいか頬っぺたを真っ赤にして俺の部屋を見上げていた。
「翔(ショウ)お母さんには言ってきたのか?」
尋ねると
「うん。お部屋に入って良い?」
両手を精一杯俺に伸ばしてくる。
「待ってろ」
玄関の鍵を開けると、寒〜いと抱き着いてきた。
半年前隣に引っ越してきて以来、何故かなつかれている。
「ココア飲むか?」
冷えきった頬を両手で包んでやりながら尋ねると
「飲むぅ!」
ぴょんぴょん跳び跳ねて喜ぶ。
ココアと自分用のコーヒーを持って部屋に戻ると、翔がベッドの下から雑誌を引っ張り出していた。
「お兄ちゃん、なんで女の人が裸なの?」
クリッとした目で質問してくる。
「うっ‥」
言葉に詰まっていると
「なんで〜?」
と更に聞いてくる。
「子供には解んないの」
ココアを手渡しながら言うと
「子供じゃないもん!苦いコーヒーだって飲めるんだよ!」
プーっと頬を脹らませながら反論してきた。
「じゃ、交換」
翔の手からココアを取り、代わりにコーヒーを渡す。
「良いよ。僕、苦いの平気だもん」