ショート
□印
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知らない人の車に乗ったらダメだって誰でも分かってる。
オレだって知らない奴の車なら乗らなかった‥
「琉(リュウ)。こんな時間に何してるんだ?」
学校をサボって街を彷徨いていたオレに、後ろから聞き覚えのある声が掛かる。
振り向くと中学三年の時担任だった榛葉(ハシバ)が居た。
「榛葉こそ、金曜の昼間にこんなとこ居て良いの?」
悪びれることもなく聞き返した。
「‘先生’だろ。まったく真面目に高校生やってるもんだとばっかり思ってたのに、なぁにやってんだお前は」
言いながらオレの頭を小突く。
「ベツに‥ 天気良いから散歩」
「ったく。相変わらず‥」
榛葉はそこで言葉を切ってオレの後ろに視線を向けた。
「なに?」
オレが振り向こうとするのを榛葉が止める。
「見るな。補導員がいる」
そう言うとオレの手を引っ張り走り出した。
足が遅いわけじゃないが、コンパスが違いすぎる。
オレは榛葉に引き摺られる様に走った。
やっと足を止めた榛葉は車の前で乗れって合図をする。
まぁ暇だし。
補導されんのも面倒だ。
軽い気持ちで車に乗り込んだ。
その瞬間、オレは選択を誤った。
その事に気付くのに一時間もかからなかった。