和泉家の事情
□俺の気持ち
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「爽兄(そおにい)?」
不安でしょうがないって顔で下から伺うように覗き込んでくる勇哉。
「あ〜、ごめん。ちょっと考え事してた」
優しく頭を撫でてやる。
普段はそれで嬉しそうに抱きついてくるはずの勇哉が、今日はまだ何か言いたそうに下から見上げてくる。
「ん?どうした。お前こそ何か言いたそうだな?」
言いながらもう一度頭を撫でてやる。
それを待っていたかのように
「爽兄は僕の事、邪魔じゃない?」
俯きながら小さな声で尋ねてきた。
「‥邪魔?」
「うん」
なぜ急にそんな事を言い出すんだ?
「そんなわけないだろう?だったら最初から一緒に暮らしたりしないよ。どうしてそんな風に思ったんだ?」
「‥‥」
「勇哉?」
黙り込みそうになる勇哉を優しく促す。
「‥‥敬兄(けいにい)が」
敬汰の名前に舌打ちしそうになった。
「敬汰がそう言ったのか?」
敬汰は高三の弟だ。家を出たいのは敬汰も同じで、勇哉がうちに住む事が決った時に、自分も同居したいと騒いでいた。「ワンルームに三人は無理だ」と諦めさせたのだが。
「僕が居ると爽兄が彼女を家に呼べないって」
あのバカ!
適当言いやがって。