夜にまつわる5のお題
01.バスタイム(side.栄)
昇り立つ湯気と浴槽いっぱいに張られたお湯。
視界に靄が掛かったような状態でも、祈の上気した幼い顔は見える。
のんびりと気の抜けた顔が浴槽の縁に預けられているのを見ると、何となくおかしくて笑みを浮かべた。
「なぁに?」
「いや。何か可愛くて」
「う?」
キョトンとする祈の頭を撫で腕を引いて抱えると、恥ずかしそうにしながらも笑ってくれた。
引かれるように火照った頬に口付け、一回りも小さな祈りの手を握る。
「お兄ちゃん?」
「ん?」
「何か今日、お兄ちゃんのほうがくっつき虫みたい」
「たまにはいいだろ?」
「うん…でも恥ずかしいよ」
「じゃあ前向いてていいから。こうさせてくれな」
「ん…」
もじもじと華奢な背中が揺れる。
だけど、そうやって恥ずかしがっていてもしばらくすればこっちを向いて甘えてくるんだ。
そんな祈を想像し待ちながら今はその背中を見つめ、俺はこっそり微笑んだ。
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