‡長編小説‡

□第四楽章−恋唄−
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そんな事の有った次の土曜、
僕は早速、恵の音楽教室について行く事にした。

以前、恵が海へ続くと指差した道を真っ直ぐ行くと、
途中になだらかな上り坂の分かれ道が有る。
そこを上がって少し行くと、小さな学校が姿を表す。
さして大きなグラウンドすら無かったが、
島全体を駆け巡る子等には目下必要無いのかも知れないな、と改めた。

教室となるのは体育館のようなホールだった。
むろん皆様が想像した体育館をふた周り程、小さくして戴きたい大きさだ。

入口に近付くと、子等が悪戯に叩くオルガンの音が小気味よく鳴っているのが聞こえた。

恵が、

ピアノじゃなくてオルガンなのよ。ごめんなさい

と笑い、舌を出す。
中に入ると、いち早く恵に気が付いた少年が大声で皆に告げた。
「おぉ〜!恵ネェネェが男連れて来たぞ〜!」
一斉に子供達は僕らに駆け寄る。
口々に「男ぉ」と叫んでいる

「こらぁ!何言うのぉ!あんた達ぃ!!」

恵は腕を振り上げて怒ったが、僕は可笑しくて思わず吹き出して笑ってしまった。

思いもかけない冷やかしだ。
しかも、こんな子供達から受けたのだから、可笑しくて仕方ない。恵は、そんな僕に気が付き、納得いかない顔を見せた。

「政司さんも、ちょっと笑いすぎです!……そんなに笑われたんじゃ、何だか少し、悲しいわ。」

え?

僕は彼女の最後の言葉に笑いを止めて彼女を見たが、その時には、すでに子供達とオルガンに向かっていたため、その台詞の真意を尋ね損なった。



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