‡長編小説‡

□第六楽章−音遊び.2−
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そしてそれは、開始から5分も経たずに、恵がどちらかの尻を叩いて終わりを告げる。

まるで何年も苦楽を分かち合った友人達のやり取りのようで、
僕はその喜びを、嬉し泣きにも似た感覚で受け止める。


結局の事実は、明日、亮介の音楽仲間が、家を訪れるらしかった


そう。亮介はこの島で畑仕事をしてはいるが、しっかりとした唄い手としても本島で活躍していた。
その人気もなかなかのもので、島の唄い手の歌を紹介するラジオ番組では、人気曲として、必ず亮介の曲は紹介された。

民謡も唄えば、オリジナル曲も披露する
彼は、まだこの島の伝統的な三線を愛する、若者は勿論、幅広い年齢層に支持される唄い手だ。

自惚れと笑うだろうが、僕は親友として、鼻を高く思う。
尊敬に値する。
勿論、親友などと言っていいかも解らない程に短い期間の付き合いなのだが、
彼が先日、僕の肩を叩き、この沖縄の言葉。ウチナーグチで

「イャー、イチドゥシサァ!」

と、言ったのを確かに覚えている。
そして、その言葉の意味は、
おまえは親友だ
と言う意味だ、という事も勉強させて貰った。
同じ事は勿論恵にも、
そして幸子さんにも言われた事が有る。
幸子さんは強烈で、当たり構わず僕を抱きしめ、その単語を口にしてくれた。


記憶の無い僕に新しく蓄積された嬉しい記憶だ。



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