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カーニヴァルで男主×與儀。
 ̄ ̄ ̄
ぶちまけてしまった。
軽い頭痛にコメカミを押さえ、足元に散らばる破片に溜め息を吐く。
仄暗い灯りに照らされた、星のランプだった欠片たち。
輪〈サーカス〉の備品は血税の一部だというのに。
「……まぁ、壊れてしまったものは仕方ない、か」
ちり取りと箒が要るな……と、振り向いた時だった。
「ちょっ…!なんか今、凄い音……って!わぁっ、大丈夫!?」
大袈裟な声と足音。
そこには輪の優秀な花形闘員、我らがニャンペローナ……の、中の人が居た。
「與儀、さん」
「あ、道具係の…!大丈夫?怪我は無い?」
綺麗な指が伸びてきて、問答無用で手を取られる。
が。
軍手をしてる上、箱を落としただけなので、手には傷ひとつ無い。
「大丈夫です。お騒がせして申し訳ありません。すぐに片付けますので」
そっと手を引くが、彼は気にした様子もなく……逆に、ホッと息を吐いた。
肩の力を抜いて、心底、安心したように。
だが
「そっか…怪我が無くて良かったー。あ、俺も手伝うね?」
しゃがむ彼が星の――硝子の破片に素手を伸ばし、
「いけません!」
今度は俺が、彼の手を握る番だった。
「へ…?え!?」
「硝子を素手で…!貴方は何を心配してたんです?少しは、ご自身の怪我も気にして下さい」
「え、あ……いや。怪我くらいしょっちゅうだし…」
「そういう事を言ってるんじゃありません」
「ごっ……ごめんなさい」
叱られることに慣れないのだろう。
彼の涙目を見て、俺もやっと落ち着いた。
手を離すと、小さく震えた唇がもう一度謝罪を呟く。
「……いえ、俺も強く言い過ぎました。ただ、」
「ただ…?」
軍手越しに掴んだ手は、柔らかくて
「貴方が心配して下さったように、俺も、貴方に傷付いて欲しくないだけです。今も……いつでも」
綺麗な指だ、と。
思ってしまったから。
顔を上げると、ポカンと開く口が見えた。
長い睫毛、柔らかな金の髪、瞬く瞳。
見る間に赤く染まる、頬。
「あっ……のっ、俺っ!片付けっ!」
急に上擦った奇声をあげた。
立ち上がる與儀さんは、何故か両手で顔を扇いでいる。
「あぁ、でしたら箒とちり取りを」
持ってきますので、と。
「俺、取ってくるっ!」
続く言葉は、彼の足音にかき消されてしまった。
流石は輪の闘員。
その背中は、もう見えない。
あとにポツン、と残されて、俺は
「何処まで取りに行ったんだ?あの人…」
掃除用具入れから箒を出した。
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13.06.18.〜