頂き物

□桜 恋心 舞い踊る
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ひらひら。
桜の花びらが、舞い散る。
ひらひら。ひらひら。
風が吹き、空へ、舞い上がる。
風が止み、地上へ、舞い降りる。
ひらひら。ひらひら。ひらひら。








桜 恋心 舞い踊る








春とは桃色の美しい桜が咲き誇る季節。
辺り一面、桃色一色に染め上げられ、人々に感動と娯楽を齎してくれる。
だからこの時期はみんな、花見を必ずする。
それは大人だけでなく子供も同じである。
銀魂幼稚園に通う園児達も満開を迎えた桜がある、近くの公園まで来ていた。
遠足と称した花見をする為に。


「どうじゃ〜、綺麗じゃろ〜!!」
「うおぉ!!すげぇえ!!」
「きれい……」
「桜がいっぱいネ!!」


公園に着いた途端、園児達はそれぞれ感嘆の言葉を漏らした。
小さな目は煌めき、食い入るように桜を見ていた。
そして誰しも今すぐに遊びたいというオーラを放っていた。
担任の辰馬はそんな子供達に苦笑したが、連れて来てよかったと思った。


「よーし!!今から自由時間じゃ!!各自遊んだりご飯食べたりしていいぞ!!」
「「「やったーー!!!!」」」
「ただし!!この公園からは一歩も出ないこと!!わかったがかぁ?」
「「「はーーい!!!!」」」


時間がちょうどお昼だった為、辰馬は直ぐに自由時間にした。
園児達には事前にお昼のお弁当を持ってくることを言っておいたので、各々レジャーシートを引いたりして桜の下で食べている。
銀時と土方も一緒に食べるのか、二人でレジャーシートを協力して引き、その上に仲良く座ってリュックからお弁当を出していた。


「うおっしゃああ!!飯だぜぇえ!!!!とーしろー、早く食べ…よ?」
「あれ……なんで…どうしよう……」
「どうかした?」
「ぎ、ん………うぅ…」
「えっ、ぇええ!!??」


弁当を出すのがあまりにも遅い土方を不思議に思った銀時が声をかけた瞬間、土方の大きな瞳から涙が溢れてきた。
それを見た銀時は、いきなりでもあり、至極驚いた。
自分は何も悪い事をしていないのに、自分が泣かせてしまった感じになってしまった。
だから兎に角、謝らなければいけないと思い、銀時は勢いよく謝った。


「とーしろー、ごめん!!謝るから泣かないで…!!」
「うぅ……ちがうぅぅ…ぎん、は、ひっく…わるく、ない…」
「へっ?」


銀時は必死に謝ったが、土方からは違うと否定されてしまった。
これには銀時も訳がわからなくなり、首を捻るだけだった。


「じゃあ、何で泣いてるの…?」
「ひっく…お、」
「お?」
「お弁当わすれちゃったのぉぉ…!!」
「なぁんだ………って、ぇええ!!??」


土方が言った事があまりにも重大過ぎて、銀時は反応が遅れてしまった。
その間にも土方の涙は止まるどころか、勢いを増し、まるで滝のように次から次へと溢れてくる。
しかし銀時は驚いていたものの、さっきのように慌てず、冷静だった。
リュックから出してあった弁当からサンドイッチを一つ手に取り、それを泣いている土方の前に差し出した。


「とーしろー、泣かないで。俺のお弁当はんぶっこしよっ!!」
「えっ…?」
「はいっ!!サンドイッチ!!」
「えっ、えっ!?い、いいの…?」


土方は銀時の勢いに流されて受け取ったのはいいが、今になって申し訳ない気がしてきた。
弁当を忘れたあげくに、いきなり泣いてしまい、銀時に迷惑かけてしまった。
それなのに銀時は嫌な顔一つせず、自分のお弁当を分けてくれると言うのだ。
嬉しいという気持ちもあるが、罪悪感がないというわけでもない。
このまま本当に貰ってしまってもいいのか土方にはわからなかった。
そんな時、いきなり銀時が俯いていた土方の頭を撫でてきた。


「ぎん…?」
「お弁当忘れたのはとーしろーが悪いんじゃないよ…それに俺が作ったやつ、恋人のとーしろーに食べてほしいしっ!!」
「えっ…?こいび、っ〜〜〜////」


銀時の“恋人”という単語に土方は顔を真っ赤に染め上げてしまった。
しかし一方の銀時は笑顔を浮かべている。
早く土方に食べてほしくて堪らないのだ。
これを見た土方が断れるわけない。
しかも銀時が自分の為に朝早く起きて作ってきてくれたのだから。


「じゃ、じゃあ…いただきます…////」
「どうぞー!!」


土方は手に持っていたサンドイッチを一口食べた。
その瞬間、口の中に甘さが蕩け出した。
サンドイッチの中身はチョコレートだったのだ。
何とも銀時らしさが出ているサンドイッチで、自然と土方は笑顔になってしまった。
それを見た銀時は不思議そうに首を傾げていた。


「とーしろー?」
「ぎん、ありがとう…このサンドイッチ、すっごい美味しい!!」
「まぢでか!?よっしゃああ!!」


銀時は土方に美味しいと言われたのが相当嬉しかったのか、ガッツポーズをしている。
土方はそんな銀時を笑顔で見つめながら、もう一口サンドイッチを食べた。
チョコレートの甘さが口内に広がると同時に、銀時の気持ちが同じように心中に広がった。
そして、それだけで嬉しさや安らぎ、幸せ、銀時への“好き”という気持ちが大きくなっていく。
だからなのか、口から言葉が素直に出てくる。
いや、気持ちが溢れて、伝えたくて堪らないのかもしれない。


「ぎん」
「ん?なに?」
「好き、大好き。ありがとう」


そう言って土方は幸せそうに微笑んだ。
その微笑みは周りに散っている桜により、何倍も綺麗に見えた。
銀時は珍しく顔を真っ赤にして見惚れてしまった。
そんなことを知らない土方は珍しい銀時を見て首を傾げた。
その仕草がまた可愛く、銀時は堪らず土方を抱きしめた。


「とーしろーwW可愛いーw」
「えっ!?////」
「俺も大好きだよw誰よりもだーーい好きwW」
「う、うん…!!////俺も、一番、好き…!!」


銀時と土方は互いに笑顔を浮かべ合った。
そして仲良く銀時の作ったサンドイッチを食べた。
それら全部、中身も甘かったが、二人を取り巻く雰囲気も甘かった。






ひらひら。
桜の花びらが、舞い散る。
ひらひら。ひらひら。
風が吹き、空へ、舞い上がる。
風が止み、地上へ、舞い降りる。
ひらひら。ひらひら。ひらひら。今日も桜の花びらは、恋心に“好き”という気持ちを積もらせていく。




Fin
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