短編
□★銀の蝶舞う夏の夜
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「…はい?」
何を言っているんだろう、この子は。
頬を染めながら、上目遣いに俺を見ている土方と言ったら、可愛いとしか言い様がないというのに。
「だって…さっきから、何か見られてるし…」
やっぱり変なのか…?と、不安そうに尋ねてくる土方は、可愛すぎてこの場で押し倒してしまいたいくらいだ。
見られてる、というのは、皆土方が綺麗過ぎて見とれているのだろう。
身に纏っている浴衣は、彼の瞳と同じ漆黒に銀色の蝶が描かれていて、人目見ただけで高級品だと分かる。
触れればさらさらと指通りのいい漆黒の髪はいつもと違って長く、高い位置で一つに結われていて。
その漆黒と対称的にチラリと見える彼の肌は透けるように白い。
こんな綺麗で色っぽくて可愛い土方を変だと言うヤツがこの世にいたならば、ソイツは人間じゃない。
「全然変じゃねェよ。つーか…」
「わ…っ」
ぐいっ、と土方の腕を強く引っ張り、自分の方へと引き寄せる。
そして。
「すげェ、可愛い」
耳許でそう囁いた。
「っ…」
それだけの行為なのに、土方は耳まで真っ赤に染めている。
「あー…ごめん、土方。」
本当は出店を廻ったり、花火を見たりといろいろ考えていたのだが。
こんな可愛い土方を前にして我慢なんて出来る訳がない。
突然謝った俺を不思議そうに見ている土方の手を引き、以前肝試しの仕事をした時に使った小さな小屋に連れて行った。
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