短編
□変わらない祝福
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「近藤さん…、俺ァちょっくら散歩に行って来やす。」
「え、散歩?屯所の中を?何で?え、ちょっ、総悟クン!?」
「直ぐ帰って来るんで、土方さんには言わねェで下せェ。」
本当は今すぐに走り出して、あの二人の居ないところへ行きたい。
けれど、今そんなことをして屯所の外へ出れば、近藤さんやあの人に心配を掛ける。
それだけは嫌だったので、屯所内でも人気の無い場所へ行くことにした。
「…」
静かな場所で頭を冷やせば少しはマシかと思ったのに、俺の苛立ちは増すばかり。
「…畜生、何で…ッ」
思わず出た声に、反応するものは居ない。
と、思っていたのだが。
「何が?」
「…旦那…何の用ですかィ。」
何でよりによって今、ここに居るのがこの人なんだろう。
近藤さんとか、山崎とか、チャイナとか、…あの人とか…、他にも屯所にいる人間はたくさんいるのに。
何で、一番会いたくないこの人なんだ。
「先に俺が質問してんですよ。答えろコノヤロー。」
「…質問…ってのは、何ですかィ」
「だぁかぁらー、『何で』って、何が『何で』なんだよ」
そんなの、決まっている。
「何で…ッ、あの人の隣にいるのがアンタなんでィ!!」
何で何で何で。
何回問うても、答えなんてない。
そんなこと分かっているのに。
「何で…ッ、俺じゃねーんだッ!ずっとあの人の側にいたのは、俺な…のに…ッ!何で、アンタとあの人は出会っちまったんだ…ッ!!」
想いが溢れて、止まらない。
「何で…、あの人はアンタを愛しちまったんだ…ッ!!」
吐き捨てるように言った言葉は、誰に対して言ったモノなのか。
「俺は、真選組を何より大事にするあの人が好きだった…!なのに、今のあの人はー…」
アンタを優先する、そう言おうとしたのに、自分に向けられた殺気のせいで、言葉を発することが出来ない。
「今のあの人は、何だよ…?」
それは勿論、旦那から出ているモノで。
「真選組を…、テメーを大事にしてねーってか」
一見すると笑っているように見えるが、瞳がそれを裏切っていて。
「ふざけんじゃねーよ。テメー、アイツの側でずっと、アイツの何見てきたんだ。」
死んだ魚のような目、といわれている瞳が鋭い光を宿している。
「アイツは今も昔も…、自分犠牲にして、何よりも大事な真選組やテメーら護ってんだよッ!」
「…ッ」
「沖田よォ、本当は分かってんだろ。例えアイツに、真選組以外の大切なモノができたとしても…」
あぁ、本当は…分かっていた。
「テメーや真選組を大切に想う気持ちは変わんねーよ。」
あの人は、そういう人だって。
そして、そんなあの人だから、俺ァ好きになったんだ。