短編

□願いは天へ、想いは君へ
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「そういや、新八は?」




「あのダメガネなら、お通ちゃんの七夕ライブに行ったアル。」




いつも一緒に居るメガネの少年が居ないと思ったら、そういうことか。



確か『寺門通親衛隊』とやらの隊長をしていると、銀時に聞いたことがある。




「あんなアイドルオタクダメガネはどうでもいいアルヨ。」



今頃は盛り上がってるんだろうな、なんて考えていると、少しむすっとした様子の神楽がそう言った。




いつも一緒にいる少年が居なくて寂しいのだろうか。


しかし、そう思ったのも束の間。



神楽の表情はあっという間に笑顔に変わった。




「それよりトシちゃん!短冊に願い事書くアル!」



「あぁ、そういえば…」




そんな習慣があったか。





「私銀ちゃんに教えて貰っていっぱい書いたネ!」



見て見て、と神楽が指さす先には大量の短冊。



ざっと100枚はあるだろう。



「…あれ全部書いたのか?」



「違うアル。半分はソーゴヨ。」



それでも50枚は書いたんだ。



そう思ったが、それ以上は突っ込まず、大量にある短冊の一枚を見てみた。



そこに書かれていたのは。



『腐ったこの世界がぶっ壊れますように』



…見なかったことにしよう。



本当は燃やしてやりたいところだが、笹に燃え移っても困るしな。



気持ちを切り替え、次に見た短冊には。



『土方コノヤローがくたばりますように』



…名前は書かれていないが、誰が書いたのかなんて簡単に予想がつく。



これも燃やしてしまいたいが…、笹に燃え移っても困るしな。



もう一度気持ちを切り替え、次の短冊を見ると。



『エリザベスが…』



「もっとまともな願い事ねーのか、テメーらはァァァ!!!」



3つ目の短冊を見て、ついにキレた俺は短冊を燃やすべく愛用のマヨライターを取り出した。


桂が「何で俺の願い事は最後まで読まんのだ!?」と叫んでいるが気にしない。



本気で火をつけてやろうとした瞬間。



「どうしたアルか、トシちゃん」



楽しそうに短冊を書いていた神楽にキョトンとした顔でそう聞かれ…。



俺はマヨライターを仕舞った。



すると。





「おーい、多串君。上、上がって来てー。銀さん降りられなくなっちゃったー。」



まるで全てを見ていたかのようなタイミングで、いつの間にか屋根の上にいた銀時が俺を呼んだ。




「そーか。じゃあ一生そこから降りてくるな。」



「えぇ!?ちょ、そこは『しょーがねーな』とか言って上がってきてくれるんじゃねーの!?」



ぎゃあぎゃあと屋根の上で騒ぐ銀時。



「銀さんが一生屋根の上から降りられなくてもいいっつーのか、コノヤロー!!!」



「全く問題ねーっつってんだろ、バカヤロー!!!」



「テメッ、そんなこと言ったらアレだぞ!えーと…、とにかくアレだぞ、コノヤロー!!!」




「アレって何だァァァ!!!ちょっと見ない間に日本語も出てこないくらい馬鹿になったのかテメーは!!だから天パなんだよ!!短冊に『天パが治りますように』って書いとけ、バカヤロー!!!」



「天パ舐めんなァァァ!!!この天パはふわふわで触り心地めっさいいんだぞテメー!!何なら触ってみるか、コノヤロー!!!」



「触るかァァァ!!!つーか、んなこといつも触ってる俺が一番知ってんだよ、バカヤロー!!!」



いつの間に言い合いになったのか、お互いに訳の分からないことを大声で叫んでいたらしく、総悟や神楽、高杉、桂は俺たちをじーっと見ている。



そして、全員一斉に。




「「「「痴話喧嘩は他所でやれや、バカップル」」」」



そう言ったのだ。






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