はくしゅ集
□放課後
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放課後。
月曜日、見回り担当の日。
くそめんどくせーな、とかもう下校時間とっくにすぎてんだから誰もいねーよ、だとか思いながら教室をまわっていく。
ふと、3Zの教室を覗くと教卓ンとこに一人。
ガラッとドアを開けるとビックリしたようにこちらを見る。
お、3Zじゃねーな。
「うお〜い、何やってんだァ?そこは先生の机だぞー。つか下校時間過ぎてっからなー。」
『あ、すいません。帰ります!』
「ん、気ぃつけてなー。」
『はい!』
すっげえ笑顔。
ヤベ、キュンてしちまったアァ!!
「あのさ、聞いてい?」
『はい?』
「何でココにいたの?誰か待ってた?」
この子は3Zじゃねえ、なんかあるんだろーなー、アレかな、沖田くんとか多串くんのファンかーこんな可愛い子ほったらかすとかもったいねーなあ。
つか、銀さんなんかさみしーぞー。
『あ、えっと、待ってました。』
伏し目がちに答えた彼女。
ありゃりゃ、ンでお相手は来なかったと。
仲間だよー、さみしい同盟くんじゃおーかな。
「そっか。」
彼女の長い睫毛を見ながら、ありきたりな言葉をはっした。
『先生を待ってました。』
「え?」
『銀八先生を、待ってました。
そ、それじゃあ、さようならー!!』
そう言って(半分叫んで)顔を真っ赤にした彼女は教室から走り去った。
「え?えぇ?えぇぇぇぇ?」
俺、のこと待ってたの?3Zの教室で?教卓で?こんな時間まで?
俺のこと?
さっき見た彼女の笑顔をふと思い出すと、一気に顔が熱くなった。
「あちぃー。」
手でパタパタと仰ぎ、彼女が座っていた椅子に腰掛ける。
動悸がおさまらない。
「なに青春ぶってんの、俺。」
そう呟いて椅子の背もたれに体を預けた。
ギッと音をたてた。
少し汚れた天井、薄暗い教室。
いつもなら早く帰りてぇ、と思うのに
口元がほころぶ。
明日、彼女に会えるだろうか。
彼女は何年何組だろうか。
「早く、会いてえな。」
帰るか、と立ち上がる。
また、椅子がギッと音をたてた。
放課後
名前も学年も何にも知らない生徒。
もう、お前で頭いっぱいだよ。
!!
ありがとうございました。