吸血鬼伝説

□03
2ページ/2ページ




そしてその日の晩、三人は寝付いた振りをしてベットで息を潜んでいた。
すると、布の掠れる音がしたと思えばヒタヒタと部屋を歩く音。
その後こっそりと扉が開く音がした。

「シリウスが出たよ」

小さな声でジェームズが言うと、リーマスとピーターがコクンと頷きベットを出る。
ジェームズの透明マントを三人で被り、こっそりと扉を開けて談話室を出た。

廊下に出たシリウスは行く宛てが決まっているようにスタスタと暗い中明かりを付けずに歩く。
それに気付かれないように三人も足音を極力鳴らさずに後を付いていく。
明かりを付けなければぶつかりそうになる道をシリウスはまっすぐ歩いていく。
それが不思議で堪らなかった。


「ねぇ、シリウスやっぱり変だよ。こんな暗い中を明かりも付けないで歩くなんて…」
「ちょっと足取りもおぼつかなくなってるしね」
「な、なんかに取り付かれてる…とか…」


しっかりとしていた足取りが徐々にフラフラしてきていたのだ。
すると三人の頭の中で声が聞こえた。



「おいで」


「おいで」



微かな声なのに、こびり付いて離れない。
とても美しい声だった。


「ねぇ、聞こえた?」
「うん、あのシリウスの向かってるほうから」
「あれに誘われてるのかな…」


急に扉の前でシリウスは足を止めた。
そこはすでに空き教室になっていて使われることのない場所だった
そして扉を開けて、中へ入っていった。
あとに続いて、三人も滑り込むように教室へと入っていった。

目に入ったのは少年と抱き合っているシリウス。
「ぅゎ」と小さい声を出したピーターの口を押さえてその現場を見ていると少年と目が合った。
だが、合うはずが無いのだ。
透明マントを被っていて見えるはずがないから。


「ふふ、お友達連れてきたの?」
「!?」


少年は抱きしめられたまま笑顔を作った。
それでもシリウスは微動だにしない。
少年を抱きしめたまま動こうとしないのだ。
クスリと少年は笑うと三人に話しかけてきた。




「そこにいるんでしょう?この子のお友達でしょう?」




三人はその声に背筋が凍った。


*
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ