吸血鬼伝説

□02
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「さぁ、もうお帰り。お友達も心配してしまうよ」


そう言ってシリウスの胸板を押し返す。
いつもならあっさりと離れるはずが、今日は離れようとしなかった。
不思議に思って顔を上げてシリウスを見やると、その目には微かに光が宿っていた。


「あんた…は…だ…れ…だ…」
「口を聞ける人がいるだなんて、思わなかったよ」
「だ…れ…」


シリウスからはか細い声しか出なかった。
少年は意識を取り戻したシリウスに驚き、少し眼を見開いた。
それでもすぐ笑うと、シリウスの耳元に口を近づけて呟いた。


「さぁ、もうお帰り。お友達も心配してしまうよ」


さきほどと同じ言葉を言う。
すると、シリウスの瞳に宿っていた微かな光はまた消えた。
あっさりと腕を解き、シリウスは扉へと向かった。


「またおいで。いつでも待ってるから」


「ふふ」と教室の中で少年の笑い声が響いた。
それだけが今日頭に残った少年への記憶だった。



































また気が付けば、シリウスはベットで寝ていた。
日に日にフラフラしていく感覚はあったが、あまり意識しなかった
兎に角少年のことが気になっていた。


「あれは誰だったんだ…?」




そして今日もシリウスは彼を求めて夜を彷徨う。




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