吸血鬼伝説

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あれ以来シリウスは誘われるように毎晩毎晩部屋を抜け出し、朝方帰ってきていた。
もちろん抜け出したのはあの空き教室にいる少年に会いに行くためだった。


だが、気が付けば少年の顔も覚えていなくて。
気が付けば、自分はベットで寝ていて。
気が付けば、いつも少年の事を考えるようになった。


おかげで授業にもあんなに楽しかった悪戯さえも上の空だった。
もちろん様子がおかしいことにジェームズ達が気付かないわけがなかった。

日に日に酷くなる目元のクマ。
騒音になるのではないかと言うくらい煩かった筈が今では一日に二言三言喋るだけになり。
カッコイイと言われていた笑顔も消え。
いつも熱心だった悪戯でさえも上の空。
夜になると徐々にソワソワして足をカタカタと揺らす。

たった今も談話室で四人で居るのに頬杖を付いてぼーっと上の空。

何を聞いても「んー」とか「おう」とかしか返事を返さなかった。


「ねぇ、最近シリウス変じゃない?」
「やっぱりジェームズも気付いてた?」
「クマも酷くなってるし…話も聞いてくれないし…」


目の前で三人だけで話をしていてもまったく会話に入ってこない。

もちろん内容もまったく聞こえていない。
ジェームズもリーマスも鈍感なピーターさえも気付いていた。


「ね、ねえ」
「ん、なんだいピーター?」
「やっぱり夜に何してるか確かめたほうがいいんじゃないかな…?」
「ジェームズもそう思っていたんだろう?」
「もちろんさリーマス。親友の一大事だからね」


相変わらずシリウスは上の空だった。
「そういえば」とリーマスが声を上げる。
興味ありげに二人はリーマスを見やった。


「見た?シリウスの首筋に傷があるの」
「えっ、そんなの知らないよ」
「うん、僕も知らない…」
「ほら、今見えてるよ。あそこあそこ」
「わっ、ほんとだ!」
「あれ、噛み傷かなぁ」


ローブの間からチラリと見えるシリウスの傷。
二つの穴が開いた、まるで動物に噛みつかれた様な傷。
それを見て、ジェームズもピーターも声を上げた。

なんともそこは痛そうに青紫色に変化していた。
もちろんそれはあの少年が血を吸うために毎晩噛み付いているからだった。
だが、そんな事を知るわけもなく。三人は首を傾げるだけだった。


「今日は皆徹夜だよ?シリウスを見張ろう」
「オーケージェームズ」
「わかったよ」


三人は声を合わせ、頷いた。


*
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