吸血鬼伝説
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朝の3:48分。
今日も寝付けなかったのかシリウスはこっそりと部屋を抜け出した
部屋を抜け出して、しばらく廊下を歩いているときは焦点は確かに合っていて、意識もある。
「おいで」
声が聞こえたと思えば、シリウスの目はぼやけて、心が無い人形のようになる。
そして、おぼつかない足取りで空き教室へと近づいていった。
扉を開ければいつもと同じように少年は窓際に腰掛けていた。
「今日も寝付けなかったの?」
口に手を当ててクスリと少年は笑った。
その笑みはなんとも美しかったが、逆に怪しかった。
なんの迷いも無くシリウスはぼやけた目で少年に近づき、背中に腕を回して抱きつく。
「ふふ」と笑うと、少年も背中へと腕を回した。
「気になるの?目のクマも酷くなってるよ?」
「ふふ」とまた笑った。
そして、いつも付けている歯型へと口を寄せ、歯を立てて噛み付く。
そこからじわりと滲み出る血をおいしそうに吸う。
今日もまた美しい紅い髪を月の光にキラキラと輝かせていた。
とても同年代とは思えない小さい華奢な体。
透けてしまうのではないかというぐらい極限までに白い肌。
目の前の美しい少年は1度見るだけで忘れることがないほど、とてめ印象が強い。
それなのに朝になるとすっかり忘れているのだ。
覚えているのは綺麗な声と自分を見る綺麗な紅い瞳。
顔などまったく思い出せない。
頭の隅っこでそんなことを考えていると、少年は首元から口を離した。
そして「ふふ」と口に手を当てて笑うとシリウスに笑いかけた。
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