吸血鬼伝説

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「あ゛ー、眠れねぇ…」


唯今の時刻4時27分。

もちろん朝の4時である。
グリフィンドール生であり、ホグワーツ校の名物とも言えるシリウス・ブラック。
彼は今悩んでいた。
なぜかというと珍しく寝付けないのだ。

半開きの目は眠いのか彼の美しい顔を半減させていた。
だが、それと違って脳や体は眠いと言わないので、彼は寝ることが出来なかったのだ。
友人達を起こさないようにそろ〜っとベットを抜け出し、扉を開けた。


「ちょい外でも散歩すっか…」


さすがにこの時間は誰も起きていないだろうと思い談話室を出た。

暗い廊下は少し不気味悪いが、外の空気を吸えばラクになると思ったのだ。
案の定誰もおらず、彼はどこに行くかも決めないままフラフラと歩き出したのだ。


「これで誰か居たら焦るな…ジェームズの透明マントも持ってねぇし」


少し苦笑いをしながら、彼は杖の先端から微かな光を頼りに暗い廊下を歩いていく。
壁に掛かった肖像画達も規則正しい寝息を立てていた。
ふ、と立ち止まると音が聞こえた。


「なんだ…歌…?」


美しい歌声が聞こえてその音が聞こえるほうをチラリと見ると、途端に音が止まった。

不思議に思ってその方向へと歩を進めた。
何故か恐怖は無かった。
ただ、耳について離れないくらい綺麗な歌声を、もう一度聴きたかった。


「おいで」
「だ、誰だ!?」
「おいで」


急にシリウスの耳から聞こえる綺麗な声が自分を誘った。
確かに、さっき歌を唄っていた声だった。

その声を聞いてシリウスはフラフラとさらに奥に歩を進めた。
声はとても気持ち良くて、ふわふわと浮いている気分だった。




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