ユラユラ揺れ揺れ
咲乱れるは

桜の華。


夜桜は綺麗に咲いて
己の元で夜宴を開く彼等を
優しく見下ろしている





「綺麗ね………」


横に居る彼女は
其の一つ一つを愛でて


「……………」


彼は其の言葉を聞き
静かに一つ頷いた

機嫌が良さげなのは

桜色に染まった頬が
夜風に冷されて些だけ心地よいからか


「……でも、もう


 今年も見納めみたいね」


さっきとは一転
彼女はそう零すと
些だけ哀しげに其の桜の花に触れた


「……………」


漆黒の瞳は
目の前の碧と桃を幾度か見遣った後

静かに閉じる。


「……………復来りゃ良いだろ」







そう呟いて。

彼女は些だけ眼を見開くと
其の後直ぐに柔い表情に。


「復連れて来て呉れる?」





望など殆どしない彼女から洩れた
小さな可愛らしい望。



「……………」


彼はシートの上
反対側に寝返って一言。


「……………なら」


「…………え……?」


「……………お前が其の時迄



 俺の隣りに居るならな……




 幾らだって連れて来てやる」



彼女は些だけ、はにかんで



彼が横目で見上げた空には
小さい桃色が二つ

風に乗って飛んでいった



 


感想頂けると嬉泣きします



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