短篇

□風夢
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「しかしこんな男がどうして女に好かれるのだ?」
博雅の友人は不思議そうに首を捻るが、それは博雅も同じだった。
博雅を好きになる姫君は、何故か大抵頭のいい美人だ。
それも博雅に結婚する気が無い、というのをすっかりわかっているにもかかわらず、『それでは友として仲良うしてくださいまし』と健気なことを言うのである。
ましてや自分の顔に自信なんて無いし、歌のやり取りも苦手だ。
博雅がうんうんと唸っていると、もう一人がにやりとする。
「女だけじゃないよなぁ、博雅。」
「は?」
「どういうことだ?」
訳のわからない博雅に対し、友人の方は興味津々である。
「博雅、お前は隠しているつもりかもしれんが、噂好きな奴は皆知っているぞ。」
「隠す?何をだ。」
「お前、安倍晴明の所に通っておるそうだな。」
盗み聞きをしていた晴明はどきっ、とした。
何故そうなるんだ、と一瞬博雅の友人を恨む。
しかしそんなこととは知りもせず、楽しげに話は続いた。
「博雅。お前、絶対顔で選んでおるだろう。」
「そ、そのようなわけがあるか!俺は別に…」
「あぁ、いい、いい。確かに晴明殿に比べたら、大将殿の妹君など眼中に無いはずだよな。」
「本当に男であることを差し引いても十分心惹かれるよ、晴明殿には。実際、お呼びになりたい方もたくさんいらっしゃるという話だ。」
よく射止めたな、とからかわれ、博雅はかっと赤くなる。
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