短篇

□迷い子
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「あぁ。用があって市へやったらな、白太丸が道端にうずくまっておったらしい。良い着物を着ているから、おかしいと思って声をかけたら、母とはぐれたらしくてな。連れて帰ってきたそうだ。」
「そんな、人の子を猫か何かみたいに軽く言うなよ…」
博雅は呆れて言ったが、晴明はただ笑っただけだった。
「しかしあれは俺が預かるべきだったのだよ。」
「何故だ。」
良い身分の子供ならば、親はすぐ見つかるはずである。
しかし親を探しもしないでおとなしく自分の邸へ招き入れた晴明の考えがわからず、博雅は首を捻る。
「白太丸は蜜虫を人でないとわかっておったようだ。」
「なに!?」
晴明は事もなげに言ったが、博雅は驚きを隠しきれない。
「どういうことだ。」
「別にそう驚くこともないだろう。そういう血筋か、才のある子なのだ。そちら方面なら、俺は本業だからな。しばらく預かるにしても、俺のほうがいいさ。」
「本当にお前の子みたいだな…」
ますます真実味を持ってきた疑惑に、博雅はため息を吐くしかなかった。
そんな博雅に、晴明は苦笑して、
「心配性だな。」
「誰のせいだと思っておるのだ、お前…」
「大丈夫だ。特に思い当たることはないから。」
大体相手がほとんど男だし、と晴明は思ったが、博雅が気にしそうなので、口に出さずに微笑むだけにしておいた。
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