短篇

□時重ね
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晴明はそう言うと、また小さく笑った。
それには博雅のほうが呆れてしまって、
「わかった。もういい。お前と言い合っていると一向に話が進まん。」
と早々に降参してしまったのだった。
「俺が言いたかったのは、また春が来て嬉しいということではないぞ。」
「そうなのか。」
「そうだ。」
そう勢い良く頷いた後、まぁ少しはそういう意味もあるが、と博雅は小さな声で付け加えた。
また晴明に妙なところで追究されてはかなわない。
「お前と、初めて会うたのは春だったろう。」
「そうだったかもな。」
「だから、お前と出会って何年経っただろうか、と思っておったのだ。」
「ほう。」
晴明は少し驚いたような顔をしていた。
「お前、そんなことが気になるのか。」
「だ、大事なことではないか!」
博雅は憤慨して言った。
自分が気持ち良く考えていたことを、『そんなこと』呼ばわりされたのでは、さすがの博雅も腹が立つというものだ。
「普通、愛し合っているもの同士というのは、出会うて何年だとか、通い始めて何年になるとか、そういうことを話の種にするのではないか。」
「…お前は十代の生娘か。」
晴明は、はぁー、と深くため息を吐く。
「お前の心がいつまでも子供らしいのは別に良いが、俺までそれに巻き込むなよ。」
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