短篇

□宵惑い
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千鳥足でふらふらしている博雅をまっすぐ歩かせるだけでも一苦労だ。
しかし、酔っ払っていてもやはり惚れた男は惚れた男だ。
肩に回された腕も、手も、晴明よりずっと男らしく、時々ぶつかる胸板も晴明よりずっと厚かった。
それは晴明にとって、羨ましくもあり愛しくもあった。
自分の細く白い手や華奢な腕、薄い胸板と博雅のとを見比べながら、晴明は少しだけ頬を染めた。
その時である。
「せいめぃ〜っ!」
「博雅っ?ぅわ…っ!」
突然博雅に塀にどん、と押しつけられて、晴明は焦った。
自分よりずっと男らしい博雅が覆いかぶさっているので、全く身動きがとれないのである。
さらには手首もしっかり縫い止められてしまっているので、博雅を押し返すことも出来ない。
「博雅、どうし…」
「好きだ。」
「はぁ?」
今更そんなわかりきったことを告白されても困る。
それより早く離してくれと怒鳴り散らしたいくらいだが、博雅にだけは死ぬ程甘い晴明に出来る訳が無かった。
「博雅、とりあえず離せ…な?」
「晴明は俺が嫌いなのか…?」
優しく言った晴明だったが、目の潤んだ博雅に見つめられて、これ以上は言えなくなってしまった。
「いや、だから…」
「陰陽寮の、他の陰陽師と、お前も同じなのか…?」
「何のこと…っん!」
何をされているのか認識するよりも先に声が出てしまって、晴明はかっと赤くなった。
耳の裏を舐められているのに気が付くと、白い頬はまた赤くなる。
「まっ、て…んっあ…ひろまさ…っ」
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