短篇

□恋す影
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とにかく『何か』が何時の間にやらついて来ているらしいのだ。
最初は考えすぎだろうと気にも留めていなかったのだが、それも毎晩となるとやはり気味が悪い。
気になって後ろを振り返ったこともあるが、その姿はまったく捕らえられなかった。
しかし気味が悪いのはこれだけではない。
「出来ればお前に迷惑を掛けずに済ませたかったんだが、そうもいかなくなってきてなぁ…」
博雅は深くため息を吐いた。
「俺の親しい友人や、割りと良くしてもらっている上達部の方々が、悉く病にかかってしまったのだよ。」
「ほぅ。」
三日ほど前に、一人が高熱を出し、節々を痛がる原因不明の病にかかった。
それからというもの、博雅に関係のある人々ばかりにどんどんこの病は広がっていったらしい。
しかし、何故か当の博雅だけはぴんぴんしているし、ある陰陽師に占わせたところ、これは鬼の仕業であると言う。
これでは博雅を疑う者がいても仕方がないと言うものだ。
周りは騒ぐし、何者かには追われる。
ついにどうしようもなくなって、博雅は慌てて晴明を訪ねてきたのだった。
「しかし晴明、何も俺に憑いていないなら、鬼の仕業ではないということになってしまうではないか!」
「そんなことを言われても…」
「俺はどうしたら良いのだ!?大切な友や、ご恩のある方をこのような目に遭わせて…!俺はもう周りに顔向けが…」
頭を抱えて苦悩していた博雅だったが、ここで、ん?と博雅は首を捻った。
あることに気が付いたのである。
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