短篇

□恋綴り。
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「どちらかと言えばだぞ、晴明。」
博雅は、眉間にしわを寄せてしばらく考え込んでいたが、ついに考えがまとまったらしい。
「俺は今のままがいい。」
「ほぅ。」
「男か女かで言うたら、晴明、お前が男で良かったと思っているよ。」
博雅はしみじみと言った。
「確かにお前が女だったら子を産めるんだろうが…別に俺はお前に子を産んでほしくて通っているわけではないからな。」
「それはそうだが…」
意外に博雅が理屈っぽいことを言ったので、晴明は少し不満そうである。
それに気付いたのか気付いていないのかはわからないが、博雅は小さく苦笑した。
「それに心配だ。」
「何がだ。」
「他の男に奪られそうでさ。」
笑って言う博雅に、晴明は首を傾げる。
「あるか?そのようなこと。」
「お前、どれだけ自分が懸想されているか知らんだろ。」
すごいのだぞ、と博雅は杯を持つ手で晴明を指す。
「今でも色々な男から好かれておるのに、女になってみろ。俺なんかどうしたって近付けんよ。」
「俺はお前しか好きにならん。」
「俺だってそうだよ、それは。」
つん、と向こうを向く晴明に、博雅は苦笑するばかりである。
「しかしいくらそうだってなぁ、今よりは会いにくくなるだろうよ。色んな男が通ってきて、お前に求愛するのだぞ。こんな呑気に話などしておれぬではないか。」
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