短篇

□恋綴り。
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「俺も、確かにと思うたのだ。俺はお前を好きだし、お前も俺を好きだろう?」
「あぁ、好きだ。」
「俺が女だったら、お前も普通の結婚ができる。俺が女だったら、俺はお前の子供も産める。お前と、ずっと一緒にいられる…」
今まで触れる程度に握られていた手に、強い力が籠もった。
「でも男の俺には、それが何一つできぬのだ。お前はいつか妻を持って、子を為さねばならんのに、俺は男だからその相手をしてやりたくとも、してやれないだろう?」
博雅は困った。
何と言ったら良いか、検討もつかない。
確かに晴明の言うとおりなのだ。
いつか自分も、晴明も、子を為さなければいけない。
それぞれの家というものがあるからだ。
しかし博雅は、晴明以外の人と一緒になるなど考えたこともなく、ただ今迄通りに時が過ぎればいいと思っていた。
「別に、俺は…晴明が晴明だから好きなわけで、だから男でも女でも構わぬと思っていたのだが…」
「構わなくはないだろう?子を産めるのと産めないのとでは大違いだ。」
博雅は曖昧にして済まそうとしたのだが、晴明相手に上手く行くはずもない。
余計にちゃんと答えなければならなくなってしまい、博雅は内心冷や汗をかく。
「答えなければならんのか、やっぱり。」
「当たり前だ、馬鹿。」
なかなか答えない博雅に晴明は焦れたらしく、ついに罵倒まで飛び出す始末。
尚更早く答えないといけなくなった。
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