短篇

□下燃えの恋
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しかしこの状況では言ったにしろ言わないにしろ、晴明は怒りそうである。
「わかった。言う、言うから。」
らしくなく頭に手を当て考えた結果、博雅は決意した。
晴明に聞けば何かわかるかも、という考えはもともとあったのだし、早く解決出来るに越したことはない。
「この間、俺に縁談がきたのだ。」
「…お前に?」
「あぁ。俺があんまり色事に興味を持たぬから、周りが心配してな…無理矢理会わされたのだ。そうしたらその相手が俺を気に入ってしまって…俺は歌が苦手なのはお前も知っているだろう?苦手なりに何度も想う人がいるから無理だという内容の歌を作って何度も断りを入れているのだが、それでも毎日文が来るのだよ。」
「ふぅん…」
晴明の反応は思ったより薄かった。
意外に嫉妬心の強い晴明に何度もくだらないことで拗ねられている博雅は、少し拍子抜けである。
「お前の考えていることはいつも予想できんな。」
嫉妬を焼くなら寧ろ今だろうと博雅はすっかり呆れてしまった。
「人生、予想がつかぬ方が面白いぞ。」
そのようなことを言って、晴明は虚空を睨んでいた。
「で、俺に何をしてほしいんだ。」
「いや、出来れば自分で何とかしたい所なんだが、何分俺は歌が弱くて…お前が上手いこと作ってくれないかと…」
恐る恐る、博雅は言ってみる。
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