短篇

□客人
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「申し訳ありませぬ。」
「いや、誉めているのだ。頭が良い、とな。」
いつのまにか、酒の準備はすっかり出来ていた。
晴明は、保憲に杯を手渡し、酌を始める。
「ときに晴明。」
「はい。」
「あの博雅様とは上手くいっているのか?」
保憲はにやりとしていた。
「何をおっしゃいますか。」
「とぼけるなよ、晴明。聞けば、いつも共に鬼退治にゆくと言うではないか。」
「あれは博雅様の力が必要だからでございますが。」
そう言って晴明は苦笑していた。
「もう白状しろ。博雅様は従三位の殿上人ぞ。そのような方と陰陽師のお前が、『晴明』『博雅』と呼び合うのを見れば、誰でもその仲を疑おうというもの。」
さぁ、吐け。
保憲はそんな顔で晴明を見ていた。
「保憲様も面白いことをおっしゃるのですね。」
しかし相変わらず晴明は苦笑したまま。
それを見て保憲は、よし、と膝を叩いた。
「では、この保憲がお前に求愛してもかまわんのだな?」
「……は?」
晴明の顔が驚きの表情に変わる。
「俺はお前が好きだと、そう言っているのだが。」
「いや、それはわかりますが…私ですか?」
「そうだ。お前だ、晴明。」
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