宝物

□しゃぼん玉
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しゃぼん玉

“聞こえてる?”

“オレの想いはアナタに伝わったのかな?”


今日は晴天。紺碧の夏空の真下にはそれぞれの人生があって穏やかな日々がある…
「あれ?」
ふわふわ陽の光に照らされた七色のシャボン玉が見えた。
目を奪われぼんやりとカイジは空を見上げる。
「カイジさんおかえりー♪」アパートの二階から楽しそうに佐原が手を振っている。カイジは足早に階段を上って。
「ただいま…これどしたんだ?」
「この前のバイトでもらってきちゃいました。カイジさんもやりますか?」
佐原はにこにこと開封してないシャボン玉セットを差し出す。
「ガキくさ」
くすりとカイジは笑いながら受け取る。
「これがなかなか楽しいっスよ」
佐原はふうっとシャボン玉を吹かす。風に吹かれたシャボン玉は無数に午後の街へと散っていく。
「競争しない?」
「は?」
「どっちがでかいの作れるか勝負V」
こんなときの楽しそうでうれしそうな顔が本当に好きだ。
カイジはくすっと笑う。
「負けねえぞ」
「その言葉を待ってました♪」
いい大人が二人でなにやってんだか。
でもまだ大人と呼ぶにはあまりにも子供で。

いつまで子供でいていいのか内心不安で。
それをたわいない日々の幸せで、せめて紛らせようとしていた。
だから気づかないふりをしていた。
「おおっオレのがでかい!!みろよ佐原っ」
めずらしくはしゃぐカイジ。佐原はくすりと笑う。
「ねえカイジさん」
「え?」
佐原はカイジの髪をかきあげ露になった耳元で何かをぼそぼそ囁いた。
「…っ…佐原…」
カイジは慌てて耳を押さえ赤面する。
その押さえた手のひらも
そっと繋がれて。
「あれー?カイジさんのシャボン玉いなくなっちゃいましたね?てことで今のはなしで♪」
「あああっ…佐原てめえ!!」
憤るカイジに佐原はくすくす笑う。
「さっきの話覚えといて」ふざけたり茶化したりそのくせ急にまじめなことを言うから、いつもその一つ一つにくるくる振り回されてでも悪くないと思ってて。楽しそうにシャボン玉にまた息を吹き込む佐原の横顔に見惚れていた…

"変わらないまま一緒にいようね"

あの日囁かれた言葉は
もうこの耳には届かないし聞こえない。
繋がれた指先の温度ももうわからないし繋がる先は
どこにもない。
そこにもうあなたはいない。
今日も晴天。紺碧の夏空の真下にはそれぞれの人生があって穏やかな日々がある…
「ごめん…佐原…」
泣きながら空を見上げる。陽だまりの中にシャボン玉を見たような気がして。
顔をあげる。

ねえ置いていかないで。
手を伸ばしても届かない。帰らない日々は屋根まで飛んで壊れて消えた…






+++++

陽の光のまどろみと、しゃぼんだまの儚さとふと訪れる喪失感…
本当に素敵vV´`*

虹色と、佐原が居なくなった空虚な空の色とかいろんなカラーを感じました…〃
絵に添えた詞も使ってくだすって…!!
胸いっぱいvvV(幸)
ありがとうございました♪♪







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