宝物
□缶ビール
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風が冷たい夜…
事務所のドアを叩く音がした。
「う゛お゛ぉ〜い!!遠藤さん、いるんだろぉ〜」
ドアを開けると、だらしない格好で顔を赤らめたカイジが立っていた。
「酒くせぇな…またふられたのか?カイジ」
すると、さっきまで顔を赤らめてヘラヘラ笑っていた男の目から涙が流れた。
「うっ…う゛ぅ〜。あいつ…絶対許せねぇ!!」
泣いてるカイジの肩を抱き、広いソファに腰をおろした。
「まぁ水でも飲んで落ち着け。」
「水ぅ?酒持ってこい!!酒だ、酒!!」
仕方なく遠藤は部下に命じて酒を買いに行かせた。
「まぁ何があったか話せよ。」
「そいつとは…ついこの間知り合ったんだ。
あいつ世界で一番好きなのはオレだとかぬかしやがったくせに!!…なのにあの男…前に別れた男と寄り戻したとか言って…
うぐっう゛ぅ〜オレのこと捨てやがったんだよ!!」
言いたいことを一通り話したカイジはまた泣き始め、しまいには泣くは、わめくは、暴れるはで歯止めがきかなくなっていた。
「なんでオレじゃダメなんだよ。ちくしょう…。」
その一言を最後に疲れきったカイジは眠りについた。
冷たい風と温かい背中で目が覚めた。
「…佐原?」
「目ぇ覚めましたか?カイジさん。」
カイジは佐原に背負われて家に向かっていた。
「な…んで?」
「さっき遠藤さんから電話があって
"カイジさんを引き取ってくれ"
って言われたんで迎えに行きました。」
「…バカ」
素直に"ありがとう"が言えないカイジが可愛いと思ってしまう。
「さっ!!着きましたよ。」
「おぅ…」
千鳥足のカイジを布団まで運び、カイジの部屋を後にした。
次の日の朝…
カイジは記憶を失うこともなく、全てを背負い悲しみに浸っていた。
「(…忘れたかった)」
ズキンッと波打つように頭痛が襲ってきた。
「うっ…」
久しぶりの酒が堪えたのか今まで以上に頭が痛い。
コンビニで頭痛薬を買うために財布を持って外へでる。
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