小説

□29話 始まる対決
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次の日の朝。
いつもと同じように自分のクラスに入った、由稀菜、里奈、乃莉香、奈都美、柚香子、遥、悠の七人。
驚く事に、時間になっても先生も生徒も誰も来ない。
そして、時刻は8時50分。
七人は中庭に集まった。
六匹のパートナーとロウをそれぞれ連れて。

「・・・あと何分?」
「2分。」

由稀菜の問いに悠が答える。
そして、気が付けば約束の9時。
敵が由稀菜達の前に現れた。

「おはよ、由稀菜。」
「・・・はよ、明希。」

いつも通りとはいかないが、挨拶を交わす由稀菜と明希。
だが、由稀菜の表情はいつもと違う。

「それじゃあ、始めようぜ?・・・中原。」
「へーい!」

明希に呼ばれ、真が前に出てきた。
肩にはタヌキのぬいぐるみが乗っていた。

「行くよ、みつ。」
「うん。」

乃莉香はみつを肩に乗せ前に出た。
そして、ゴクリと唾を飲み込む。

「まずは自己紹介しなきゃね、ヤマダ。」
「ヤマトだよ〜。」

自分の肩に乗っているタヌキに話しかける真。
タヌキは“ヤマト”という名前らしい。

「ヤマト、です。・・・お、お手柔らかに。み、みつ、ちゃ、ん。」
「・・・どうして、私の名前?」

知るはずもないのに、ヤマトがみつの名前を呼ぶ。
みつはジッとヤマトを見る。
すると、ヤマトの顔は次第にりんごのように赤くなっていく。
そんなヤマトを見て、由稀菜はピンとくる。

「へぇー。あのヤマトって子、みつの事が・・・。」

由稀菜の言葉が聞こえたのか、真が口を開く。

「ヤマダの好きな子って、あの子だったんだ。」
「ち、違う!・・・っていうか、ヤマトだって!」

口では否定しているものの、雰囲気や態度から見て否定しているようには見えない。
どうやら、ヤマトはみつの事が好きなようだ。

「でも、私、ヤマトくんに会うのは初めてだよ?」
「・・・そ、か。全部覚えてないん、だったね。」

ヤマトとみつのやり取りを見て、明希が腕を組んで口を開く。

「ふぅん。だからアイツは乃莉香ちゃんのパートナーと戦いたかったのか。」

明希の言葉を聞き、オドオドとするヤマト。

「とりあえず、そろそろ始めるよ、ヤマダ。」
「ヤマ・・・。・・・・分かった。」

ヤマトは真の肩からピョンと飛び降りる。
続いてみつも乃莉香の肩から飛び降りる。

「乃莉ちゃん。今回は見ててくれない?」
「・・・え?」
「もし私が力を使い果たしちゃったら、みんなを治癒出来るのは乃莉ちゃんだけ。それに、私やってみたいから。」

乃莉香も初めて見る、みつの真剣な目。
乃莉香は、うん、と首を縦に振る。

「じゃあ、これ。」

飴のような物をみつに渡す乃莉香。
みつは素直に受け取る。

「それを食べれば力が付くから。」
「・・・うん。ありがとう。」
「頑張って?」
「うん。乃莉ちゃん、後ろに下がってて?」
「うん。」

みつに言われ、乃莉香は後ろに下がる。
そして、みつは中庭の真ん中まで移動する。

「じゃあ、ヤマトも一人で戦う?」
「う、ん。」

真も乃莉香と同じように後ろに下がる。
ヤマトはみつの方に歩み寄る。

「手加減なしね、ヤマトくん。」
「みつちゃんが、そう言うなら。」

二匹の準備が整ったようだ。
由稀菜達は明希の指示で二階の渡り廊下に移動した。
敵と同じ渡り廊下にいるが、やはりいくらかの距離がある。





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