小説

□27話 仲間と友、そして裏切り者
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力なく座る由稀菜。
その目には、いつもの光が宿っていなかった。
その横顔を心配そうに遥は見つめている。
虚ろな瞳で敵を見た。

「うそ・・・。」
「現実だよ、由稀菜。」
「認めない。絶対・・・嘘。」

乾いていく声で由稀菜は首を振る。
しかし、それに力はない。

「由稀・・・。」

遥はそんな由稀菜を優しく撫でた。

「は、るか。うそ、だよね?こんな、ことって・・・。」

同意を求める由稀菜に遥は首を横に振った。

「これは現実だよ、由稀。」
「っ!」

耐え切れなくなったのか、一粒の涙が頬を伝った。

「由稀!」
「だ、い・・・。」

膝に小さな手を置き、だいは由稀菜の名前を呼んだ。
その声に由稀菜の目に光が戻る。

「だい。」

由稀菜はだいの名をかみしめるように、もう一度呼んだ。
だいはニッコリと笑顔を向けた。

「大丈夫!きっと操られてるんだよ!あの子達が由稀菜を裏切るわけないもん!」
「・・・。」

だいの台詞に由稀菜はようやく笑顔を見せた。
けれど、それを突き放すかのようにクスクスと笑い声が響いた。

「俺たちは別に操られてないぜ?ちゃんと理解してここにいる。」
「っ!」
「嘘!由稀の友達にそんな子はいないよ!」
「じゃあ、今この状況を否定するのか?それとも、裏切った俺たちは由稀菜の友達でもないか?」
「そんなこと・・・!」
「やめなよ、だい。口でまっちゃんを言い負かせないよ。」
「・・・うん。」

遥のストップにだいはうなだれた。
そして、目に敵を映す。
その目は冷たく冷静な色を帯びている。

「やっぱ敵だったんだね、まっちゃん。」
「え?」
「へ〜。」

遥の言葉に、由稀菜はまじまじと見つめた。
それに肩をすくめる遥。

「ロウの言葉が少し気になって、ちょっと色々と聞いてみたんだ。」
「けど、ロウは喋れないって・・・。」
「うん。ダイレクトには答えてくれなかったよ。だから遠まわしで攻めたらビンゴだったわけ。」
「でも、一言も・・・!」
「由稀にショックを与えたくなかったし、確証がなかったから。」
「そん、な。」

唖然とする由稀菜。





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